ナタリズマブは再発型多発性硬化症における軸索損傷を著明に減少させる
Axonal damage in relapsing multiple sclerosis is markedly reduced by natalizumab
Gunnarsson M, Malmeström C, Axelsson M, Sundström P, Dahle C, Vrethem M, Olsson T, Piehl F, Norgren N, Rosengren L, Svenningsson A, Lycke J.
Department of Neurology, Örebro University Hospital, Örebro, Göteborg.
Ann Neurol. 2011 Jan;69(1):83-9. doi: 10.1002/ana.22247. Epub 2010 Dec 8.
目的
多発性硬化症(MS)において、現在の疾患修飾薬療法が神経損傷ならびに反応性アストログリオーシスに及ぼす効果は明らかにされていない。そこでMS患者を対象に、脳特異的な2種類の組織損傷マーカーの脳脊髄液(CSF)中への放出に対してナタリズマブ療法が及ぼす影響について検討した。
方法
ナタリズマブ療法による治療前ならびに治療6カ月後または12カ月後に、92例の再発型MS患者からCSF検体を前向きに収集した。86例では、疾患活動性の再燃(breakthrough)のためにナタリズマブをセカンドラインDMTとして用いた。ニューロフィラメント軽鎖(NFL)とグリア線維性酸性蛋白質(GFAP)の濃度を、著者らのグループが開発した高感度酵素免疫吸着測定法(ELISA)を用いて測定した。
結果
ナタリズマブ療法により、NFL濃度が平均1,300 ng/L(標準偏差[SD]=2,200)から平均400 ng/L(SD=270)と3分の1に減少した(P<0.001)。この減少後の濃度は健常対照者の濃度(350 ng/L、SD=170、n=28)と比較して有意差がなかった。サブグループ解析から、NFL放出に対する影響は、DMTによる既治療の有無、またはナタリズマブ療法開始前3カ月以内に再発または寛解状態であったかに関係なく一貫して認められることが示された。GFAP濃度には、治療前後で差が認められなかった。
解説
この結果から、ナタリズマブ療法が再発型MSにおける神経損傷の蓄積を抑制することが示された。効果の高い抗炎症療法により軸索損傷を低減できることから、恒久的な神経障害の発現を予防すると期待される。
コメント
MS患者では、脱髄病変を繰り返したうえに40代を過ぎたころから軸索病変が加わり、認知機能障害と脳萎縮を呈し、徐々に進行することがある。こうしたいわゆる二次進行型MSへの対応にはしばしば困惑させられる。ナタリズマブは、活性化したT細胞上のα4インテグリン受容体と結合してT細胞の中枢神経系への移行を抑制し、再発を防止すると考えられているが、本報告は、再発防止と同時に軸索変性を主体とする非可逆的な二次進行的変化の予防にも有効であるというもので、朗報と考えられたため取り上げた。今後は、以前から指摘されている進行性白質脳症の併発などへの対応、すなわちJCウイルスのチェック方法の確立などが必要であろう。
監訳・コメント:大阪府立急性期・総合医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
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