B型肝炎ウイルスを潜在的に保有する(B型肝炎表面抗原陰性/抗B型肝炎コア抗原陽性)リウマチ性疾患患者に対する腫瘍壊死因子α遮断薬の安全性
Safety of tumor necrosis factor alpha blockers in hepatitis B virus occult carriers (hepatitis B surface antigen negative/anti-hepatitis B core antigen positive) with rheumatic diseases
Caporali R, Bobbio-Pallavicini F, Atzeni F, Sakellariou G, Caprioli M, Montecucco C, Sarzi-Puttini P
University of Pavia, IRCCS S Matteo Foundation, Pavia, Italy. caporali@smatteo.pv.it
Arthritis Care Res (Hoboken). 2010 Jun;62(6):749-54
目的
抗B型肝炎コア抗原(抗HBc)抗体を保有する慢性炎症性関節症患者に対するB型肝炎ウイルス(HBV)感染の経過中における抗腫瘍壊死因子α(抗TNFα)療法の安全性を評価すること。
方法
2001年1月〜2008年12月に、北イタリアの外来リウマチ診療所2カ所で抗TNFα薬の投与を受けた炎症性関節症患者732例全例を対象に、抗TNFα薬の初回投与前にHBVマーカーの定量を行った。抗HBc抗体陽性例について前向き評価を行い、HBVマーカーとHBV DNAについて、6カ月ごとの評価、アミノトランスフェラーゼ値の上昇がみられた場合の評価、および研究終了時点における評価を行った。
結果
募集時点で72例が抗HBc抗体を保有していたが、うち5例はB型肝炎表面抗原(HBsAg)陽性であったことから本研究に含めなかった。男女比は26:41であり、追跡調査期間の平均値±SDは42.52±21.33カ月であった。患者のうち25例はインフリキシマブ、23例はエタネルセプト、19例はアダリムマブの投与を受けた。また、51例はメトトレキサート、52例は非ステロイド系抗炎症薬、43例はprednisone(3例では7.5 mg/日を超える用量)の併用投与を受けた。抗HBc抗体陽性例はすべて初回観察時点でHBV DNA陰性であった。追跡調査期間中に、ウイルス量の増加を伴うHBV再活性化がみられた患者はなく、またHBsAg陽転がみられた患者はなかった。
結論
HBsAg陰性の患者で抗HBc抗体が陽性となることは、過去のHBV感染の徴候であり、慢性肝炎を示唆するものではない。本研究でHBV再活性化がみられなかったことから、これらの患者に対する抗TNFα療法は十分に安全であると思われるが、慎重なモニタリングが必要である。
コメント
TNF阻害の生物学的製剤は関節リウマチ等の疾患に極めて有効である。しかしTNFαはウイルス抑制の機能を有するため、ウイルス感染症合併患者に対する投与は懸念されていた。特に肝炎ウイルス感染者で、再活動が観察された患者も認められた。しかし本研究において、TNFα阻害薬投与を行ってもHBV再活性化が認められなかったことにより、B型肝炎合併患者に対しても使用可能であることが示唆された。ただし、あくまで慎重に注意して使用することが求められる。
監訳・コメント:大阪大学大学院 工学研究科 吉崎 和幸先生
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