イングランドの急性期の病院における緩和ケア移行の現状:質的研究
Transitions to palliative care in acute hospitals in England: qualitative study
Gott M, Ingleton C, Bennett MI, Gardiner C.
School of Nursing, Faculty of Medical and Health Sciences, University of Auckland, Grafton, Auckland, New Zealand.
BMJ. 2011 Mar 29;342:d1773. doi: 10.1136/bmj.d1773.
目的
イングランドの急性期の病院において、緩和ケアへの移行がどのような現状になっているのかについて検討すること。
デザイン
質的研究。
施設
イングランドの地域特性の異なる好対照な2つの地域におけるセカンダリケアまたはプライマリケア施設。
参加者(対象者)
セカンダリケアまたはプライマリケアの場において、緩和ケアの提供に従事している医療専門職58人
結果
英国の医療指針で推奨されている緩和ケアへの移行は、急性期の病院においてはほとんど確認されなかった。急性期の病院においては、患者の生命予後について入院患者と日常的に話し合われることがない状況であった。緩和ケアへ移行するには医療チーム内の同意を得ることが必須条件であるが、実際には十分に達成されていない状況であった。セカンダリケアの場で働く医療専門職らは緩和ケアを患者に適用することについて、患者との話し合いをほとんど行っていない状況にあった。プライマリケアの場の医療専門職は、緩和ケアの情報が患者に伝えられていないため、急性期の病院から退院してくる多くの患者は治癒について「誤った希望」を持っている、と述べている。緩和ケア移行を円滑かつ確実に行うことの障壁となっているのは、急性期の病院では「治療をやめる」ことが困難な状況になっていること、医療職種の職階による序列があるために治療決定の際に研修医や看護スタッフが意見を述べることが制限されていること、および医療者間のコミュニケーションが不足していることなどが挙げられる。
結論
急性期の病院における緩和ケアへの移行には構造的に大きな障壁があることが、医療現場のプライマリケアとセカンダリケアの両方の医療専門職への聞き取り調査から確認された。急性期の病院における緩和ケアについて、今後の方針を確立するためには、これらの課題を克服することが必要である。
コメント
臨床医学は何としてでも人々の命を救いたいという医療者の気持ちが原動力になって、発展してきた。そのため、急性期の病院にいる医療者は、疾病との闘いを最後まで闘うことが仕事であり、この闘いに敗北宣言をするという選択肢はない。つまり、病気を受容し、病気と付き合う療養に移行するという選択肢をなかなかとれないのが現状である。治癒の見込みがなく余命いくばくもない患者が最後の安息に満ちた時間を過ごすことのできる医療施設としてのホスピスを生み出したのは、イギリスである。本論文は、そのイギリスでも、急性期の病院では緩和ケアへの移行が遅れていることを報告したものである。それでは、わが国はどういう状況になっているのであろうか。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
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