スタチンの使用と脳内出血の予後:症例対照研究とメタ解析
Statin use and outcome after intracerebral hemorrhage: Case-control study and meta-analysis.
Biffi A, Devan WJ, Anderson CD, Ayres AM, Schwab K, Cortellini L, Viswanathan A, Rost NS, Smith EE, Goldstein JN, Greenberg SM, Rosand J.
From the Hemorrhagic Stroke Research Group (A.B., W.J.D., C.D.A., A.M.A., K.S., L.C., A.V., N.S.R., J.N.G., S.M.G., J.R.), Division of Neurocritical Care and Emergency Neurology, Department of Neurology (A.B., W.J.D., C.D.A., L.C., N.S.R., J.N.G., J.R.), Center for Human Genetic Research (A.B., W.J.D., C.D.A., L.C., N.S.R.), and Department of Emergency Medicine (J.N.G.), Massachusetts General Hospital, Boston; and Department of Clinical Neurosciences (E.E.S.), University of Calgary, Calgary, Canada.
Neurology. 2011 Mar 30. [Epub ahead of print]
目的
脳内出血(ICH)は高齢者において致死率の高い疾患である。スタチン系薬剤の使用は高齢者の間でますます広まっており、ICHを発症する患者にも多く使用されている。これまでに蓄積されたデータから、スタチン系薬剤が神経保護作用をもつことが示されているが、ICHの予後との関連については一貫した結果が得られていない。そこで、著者らは、著者らの所属する施設の未発表データを含めた、すべての利用可能なエビデンスのメタ解析を行い、スタチンへの曝露がICH発症患者にとって保護的に働くかどうかを調べた。
方法
著者らが前向きに確認したコホートにおける、発症前にスタチンを使用していたICH患者238例とスタチンを使用していなかったICH患者461例について、90日後の機能的転帰を比較した。次に、このコホートに、発表されている研究を加え、変量効果モデルを用いて、合計でスタチンを使用していたICH患者698例とスタチンを使用していなかった患者1,823例についてメタ解析を行った。
結果
著者らの施設のデータから、ICH発症前のスタチンの使用と90日後の良好な転帰(オッズ比[OR]2.08、95%信頼区間[CI]1.37〜3.17)ならびに死亡率低下(OR 0.47、95%CI 0.32〜0.70)との間に関連が示された。スタチン系薬剤の種類による特異的な影響は認められなかった。発表されているすべてのエビデンスのメタ解析から、ICH発症後の良好な転帰(OR 1.91、95%CI 1.38〜2.65)と低い死亡率(OR 0.55、95%CI 0.42〜0.72)に対するスタチン服用の影響が認められた。
結論
スタチン系薬剤のICH発症前の使用は、発症後の良好な転帰ならびに低い死亡率と関連する。この現象はスタチン系薬剤のクラス効果によるものと考えられる。これらの観察結果の基礎にある生物学的メカニズムの解明にはさらなる研究が必要である。
コメント
スタチン服用の高齢者が増加し、さまざまなプレイオトロピック効果(多面的作用)が指摘及び期待されてきた。当「難病update」でも、多発性硬化症に対する効果の報告を、結果の良し悪しにかかわらず紹介してきた。本報告は脳出血が起こった時点でスタチンを服用していた場合に、死亡率の低下と良好な予後が認められることを指摘したものである。機序については、当初から言われているスタチン系薬剤の神経保護作用によるものなど推測の域を出ないようである。ICHは脳梗塞に比較して生命予後は一般的に不良であるため、今回の結果はICH患者にとって朗報であるが、高脂血症のない患者への投与方法や機序の解明などについて今後検討が必要であろう。
監訳・コメント:大阪府立急性期・総合医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
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