進行性パーキンソン病に対するAAV2-GAD遺伝子治療:無作為化二重盲検偽手術対照試験
AAV2-GAD gene therapy for advanced Parkinson’s disease: a double-blind, sham-surgery controlled, randomised trial.
LeWitt PA, Rezai AR, Leehey MA, Ojemann SG, Flaherty AW, Eskandar EN, Kostyk SK, Thomas K, Sarkar A, Siddiqui MS, Tatter SB, Schwalb JM, Poston KL, Henderson JM, Kurlan RM, Richard IH, Van Meter L, Sapan CV, During MJ, Kaplitt MG, Feigin A.
Wayne State University School of Medicine, Parkinson's Disease and Movement Disorders Program, Henry Ford West Bloomfield Hospital, MI, USA.
Lancet Neurol. 2011 Apr;10(4):309-19.
背景
動物モデルでは、グルタミン酸脱炭酸酵素遺伝子(GAD)の導入などの方法によって視床下核におけるGABAの産生を調節することで、パーキンソン病の大脳基底核機能が改善される。
目的
進行性パーキンソン病を有する患者を対象として、視床下核におけるAAV2-GAD遺伝子治療に対する両側注入の効果を偽手術と比較して評価することを目的とした。
方法
年齢30〜75歳で、進行性L-ドパ反応性パーキンソン病を有し、1晩休薬後の統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)の運動スコアが25以上の患者を、今回の無作為化二重盲検比較対照第2相試験に組み入れた。試験は、米国の7つの医療機関で2008年11月17日から2010年5月11日まで実施した。遺伝子注入不良が発生した患者、またはカテーテルの先端が事前に規定した目標部位から外れた患者は、有効性解析のための盲検解除前に患者を分析対象から除外した。主要アウトカムは、休薬後のUPDRS運動スコアの二重盲検評価におけるベースラインから6カ月後の時点までの変化を評価した。本試験は、ClinicalTrials.govのNCT00643890として登録されている。
結果
適格性評価した66人の患者の中から、23人を偽手術群に、22人をAAV2-GAD注入群に無作為に割り付けた。その中から、それぞれ21人と16人について解析を行った。6カ月後の最終観察時において、UPDRSスコアは、AAV2-GAD群で8.1ポイント減少し(標準偏差[SD]1.7、23.1%、P<0.0001)、偽手術群で4.7ポイント減少した(SD 1.5、12.7%、P=0.003)。AAV2-GAD群の患者は、6カ月の試験期間全体において、偽手術群の患者に比べてUPDRSスコアのベースラインからの改善が有意に大きかった(反復測定分散分析[RMANOVA]、P=0.04)。手術後6カ月以内に重篤な有害事象が1件発現した。この事象はAAV2-GAD群に発現した腸閉塞であり、治療または手術手技との関連性はないと判断され、その事象は完全に消失した。他の有害事象は軽度または中等度であり、手術と関連する可能性があると判断されたが消失した。最も多く認められた有害事象は、頭痛(AAV2-GAD群7人対偽手術群2人)および悪心(6人対2人)であった。
考察
AAV2-GADの視床下核両側への注入の有効性と安全性が示されたことで、パーキンソン病を標的としたさらなる開発が支持され、神経系疾患に対する遺伝子治療の有望性が示された。
資金提供
Neurologix
コメント
本研究は、動物実験でグルタミン酸脱炭酸酵素や他のGABA調節を行う遺伝子導入を視床下部への直接注入として行ったところ、GABAによりパーキンソン病における基底核機能改善が示されたとの知見に基づき、その仮説のもとに臨床試験を行って人間にも治療効果があるかをみようとしたものである。脳神経外科学領域において視床下部核に電極を埋め込む深部脳刺激術(deep brain stimulation)が開発されているが、その方法で、GABA生成に必要な(GAD)遺伝子を搭載したアデノアソシエイテッドウイルス(AAV)ベクター(AAV2-GAD)を視床下核に注入し、臨床的に意義があったと報告している。しかし、パーキンソン病の原因は複雑であり、そのような単純な方法が病気の根本的な治癒につながるとは思いにくいが、病状の改善に少しでもつながるのであれば治療の選択肢の1つとなる可能性があると思われる。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
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