マトリプターゼは変形性関節症における軟骨マトリックス分解の新たな発動因子である
Matriptase Is a Novel Initiator of Cartilage Matrix Degradation in Osteoarthritis
Milner JM, Patel A, Davidson RK, Swingler TE, Desilets A, Young DA, Kelso EB, Donell ST, Cawston TE, Clark IM, Ferrell WR, Plevin R, Lockhart JC, Leduc R, Rowan AD.
Newcastle University, Newcastle upon Tyne, UK.
Arthritis Rheum. 2010 Jul;62(7):1955-66
目的
組織の病的な代謝回転にセリンプロテアーゼが関与していることを示すエビデンスが増えている。本研究の目的は、変形性関節症(OA)における軟骨破壊に対して膜貫通型セリンプロテアーゼであるマトリプターゼが果たす役割について評価することであった。
方法
Low Density Arrayを用いて、股関節OA患者または大腿骨頸部骨折(NOF)患者から得た大腿骨頭軟骨におけるマトリプターゼの遺伝子発現を評価した。マトリプターゼがコラーゲン分解に及ぼす影響について軟骨分解モデルを用いて検討した。また、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の発現に及ぼす影響についてリアルタイムPCR法を用いて解析した。ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動/N末端アミノ酸配列解析を用いてproMMPのプロセシングを調べ、それがプロテアーゼ活性化受容体2(PAR-2)を介することを、マウスを用いた滑膜灌流アッセイにより調べた。
結果
マトリプターゼの遺伝子発現はOA軟骨の方がNOF軟骨に比べ有意に上昇しており、マトリプターゼはOA軟骨細胞に局在していた。マトリプターゼはproMMP-1を活性化し、proMMP-3を完全な活性型にプロセシングすることが示された。軟骨におけるサイトカイン刺激によるコラーゲン分解は外因性のマトリプターゼによって有意に亢進したが、マトリプターゼのみによってもOA軟骨におけるメタロプロテアーゼ依存性の有意なコラーゲン分解が引き起こされた。マトリプターゼはMMP-1、MMP-3およびMMP-13の遺伝子発現も誘導した。滑膜灌流のデータからマトリプターゼがPAR-2を活性化させることが確認され、また、PAR-2を阻害するとOA軟骨におけるマトリプターゼ依存性の亢進が阻害されることが示された。
結論
OAにおいて、セリンプロテアーゼであるマトリプターゼの発現が軟骨細胞で亢進していること、およびマトリプターゼが特定のproMMPを活性化しコラゲナーゼの発現を誘導する能力を有していることから、このセリンプロテアーゼはOAでの軟骨破壊の重要な発動因子および誘導因子となっている。マトリプターゼの間接的な作用はPAR-2を介したものであり、これらの機序をより詳細に解明すればOA治療のための新しい重要な治療標的が明らかになると考えられる。
コメント
関節リウマチと比べると、はるかに多くの高齢者が変形性関節症を発症し、QOLの低下をきたしている。しかし、その病態解析は十分に行われておらず、特に軟骨破壊の機序については不明な点が多い。本論文は、軟骨破壊におけるマトリプターゼの作用機序の一部を示したもので、マトリプターゼ活性亢進がコラーゲン分解を生じさせることを明らかにした。このことから、マトリプターゼ活性阻害が変形性関節症の治療標的になることを示唆しており、意義のある論文である。
監訳・コメント:大阪大学大学院 工学研究科 吉崎 和幸先生
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