ゴーシェ病、パーキンソン病、レビー小体型認知症に関係する酸性β-グルコシダーゼの変異はα-シヌクレインの処理過程に変化を及ぼす
Acid β-glucosidase mutants linked to gaucher disease, parkinson disease, and lewy body dementia alter α-synuclein processing
Cullen V, Sardi SP, Ng J, Xu YH, Sun Y, Tomlinson JJ, Kolodziej P, Kahn I, Saftig P, Woulfe J, Rochet JC, Glicksman MA, Cheng SH, Grabowski GA, Shihabuddin LS, Schlossmacher MG.
Center for Neurologic Diseases, Department of Neurology, Brigham and Women's Hospital, Harvard Medical School, Boston, MA.
Ann Neurol. 2011 Jun;69(6):940-53. doi: 10.1002/ana.22400. Epub 2011 Apr 6.
目的
GBA1遺伝子のヘテロ接合体変異はパーキンソン病やレビー小体型認知症のリスクを高める。両疾患の特徴として、α-シヌクレイン(SNCA)の処理過程に異常がみられる。GBA1の両対立遺伝子の変異によりリソソームの酸性β-グルコシダーゼ酵素(GCase)活性が失われることがゴーシェ病の背景にある。この遺伝子がシヌクレイノパチーのリスク上昇に関係する機序を検討した。
方法
培養細胞ならびにin vivoモデルにおける野生型と数種類のGBA変異について、SNCAに及ぼす影響を生化学および免疫組織化学の手法を用いて分析した。
結果
培養神経細胞(MES23.5およびPC12)において、実験に用いたすべてのGBA変異遺伝子(N370S、L444P、D409H、D409V、E235A、E340A)の過剰発現により、ヒトSNCA濃度が対照ベクターと比べて121%から248%に上昇した(P<0.029)が、GCase活性に変化はみられなかった。培養神経細胞とHEK293-SNCA細胞においては、野生型GBAの過剰発現により予想通りGCase活性が亢進した(MES-SNCA細胞:167%、PC12-SNCA細胞:128%、HEK293-SNCA細胞:233%、P<0.002)が、SNCAに対しては複合的な影響を及ぼした。ただし、HEK293-SNCA細胞ではGCase活性亢進に伴いSNCA濃度の最大32%の低下がみられた(P=0.009)。培養細胞でのGCase活性の抑制(野生型の8〜20%、P<0.0017)によりSNCA濃度に検出可能な変化はみられなかった。D409Vを発現しているPC12-SNCA細胞において、変異型GBAにより誘導されるSNCAの蓄積が、自食作用を誘導するラパマイシン(10μM)により薬理学的に40%以下に減少した(P<0.02)。GBAシャペロンのイソファゴミンも関連する傾向を示した。2つのD409Vgbaノックイン対立遺伝子を発現し、ゴーシェ病の徴候を示さないマウス(GCaseの残存活性が20%以上)において、海馬細胞膜分画中の内因性Snca濃度に加齢依存性の上昇がみられた(52週齢において野生型の125%、P=0.019)。10週齢以降に神経機能障害(GCase活性10%以下)がみられる若齢ゴーシェ病マウス(V394Lgba+/+//prosaposin[ps]-null//ps-transgene)において、12週齢での内因性Snca濃度に有意な変化はみられなかった。しかし、すでに神経細胞におけるユビキチンシグナルや軸索におけるスフェロイド形成の亢進がみられ、スフェロイド形成の亢進については3週齢のカテプシンD欠損マウスでみられるものと類似していた。
解説
以上の結果から、GBA変異はその程度や加齢に依存してSNCAの蓄積を促進することが示され、これにより、GBA1変異の保有状態とシヌクレイノパチーリスクの増加との間の生化学的関係が明らかになった。培養細胞モデルにおいて、ラパマイシンによりこの毒性作用獲得の影響が軽減された。GCase活性の消失は直接SNCA濃度を増加させなかったが、リソソーム蓄積症に共通してみられる表現型である、神経細胞でのユビキチノパチーならびに軸索でのスフェロイド形成を最初に引き起こした。
コメント
東京大学の辻先生と神戸大学の戸田先生のグループが研究に参加された大規模国際多施設共同研究では、ゴーシェ病の原因遺伝子GBAの変異が、人種に関係なくパーキンソン病の危険因子であることが明らかにされた。さらに本論文ではこの遺伝子変異が、その程度や加齢に依存するものの、パーキンソン病で主に障害されるαシヌクレインの細胞内での分解とも生化学的に関連していることが指摘されている。遺伝子異常には、コードする蛋白の酵素活性との直接的な関係はなかったが、ユビキチノパチーにみられるようなある程度の形態的変化も伴っていること、また一部のシャペロンにより抑制されていることも示されており、遺伝子異常とプロテイノパチーの関係や治療法にとっても興味ある論文であるため紹介した。
監訳・コメント:大阪府立急性期・総合医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
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