動機づけ診療報酬制度の導入が、対象とされた診療行為と対象とされなかった診療行為に及ぼす影響:英国Quality and Outcomes Frameworkから得られた縦断的データ解析
Effect of financial incentives on incentivised and non-incentivised clinical activities: longitudinal analysis of data from the UK Quality and Outcomes Framework
Doran T, Kontopantelis E, Valderas JM, Campbell S, Roland M, Salisbury C, Reeves D.
National Primary Care Research and Development Centre, University of Manchester, Manchester M13 9PL, UK.
BMJ. 2011 Jun 28;342:d3590. doi: 10.1136/bmj.d3590.
目的
英国の一般医(公的なプライマリケア医)の診療行為に対し、動機づけ診療報酬プログラムが導入されている。このプログラムの対象とされない診療行為がおろそかにされていないかどうかを検討すること。
デザイン
選定された428項目の診療行為の中から42項目(動機づけ診療報酬プログラムの対象とされた23項目、対象とされない19項目)を選び、そのケアの質の目標達成率について縦断的にデータを解析する。
施設
英国の一般医の診療所148施設(患者653,500人)。
主要評価項目
動機づけ診療報酬プログラム導入前の期間(2000〜2001年度から2002〜2003年度)における傾向から予測されたケアの質の目標達成率と、プログラム導入後3年間(2004〜2005年度から2006〜2007年度)における実際の目標達成率を比較した。
結果
動機づけ診療報酬プログラム導入前の期間と比べて、ほとんどの指標についてケアの質の目標達成率が上昇していた。プログラムの初年度(2004〜2005年度)には、対象となる診療行為23項目のうち22項目において目標達成率が有意に上昇していた。これらの指標の目標達成率は2004〜2005年度以降は頭打ちとなっていたが、プログラムの対象とされた14項目については、2006〜2007年度の診療行為のケアの質の目標達成率が、導入前の予測値よりも依然として高かった。プログラムの初年度には、プログラムの対象とされなかった診療行為のケアの質の目標達成率に影響はみられなかった。2006〜2007年度のケアの質の目標達成率は、プログラム導入前の予測値を大幅に下回っていた。
結論
2001年から2007年の間にすべての診療行為のケアの質にかなりの改善が認められた。動機づけ診療報酬プログラムの対象とされた診療行為に関連する指標では改善が達成されたのに対し、対象とされなかった診療行為においては、小さいながらマイナスの影響が認められた。
コメント
英国では開業医は准公務員であるため、診療活動の動機づけが乏しい状況にあった。それを改善するために改革が進められている。その1つが2003年頃から始められている動機づけ診療報酬制度(New GP Contact)である。高血圧や糖尿病、難病の患者に対する対応などについて、患者に対するケアの質が高まると診療報酬が上乗せされる動機づけ制度である。本研究は、診療報酬の上乗せの対象とされた診療行為と、そうでない診療行為とを比較して、診療行為の質がどう変化したのかを検討したものである。わが国でも、高血圧や糖尿病、難病などの慢性疾患に対する適切な管理が国民的な健康課題となっている。わが国のプライマリケアにおいても、英国の動機づけ診療報酬制度(契約)は参考となるように思われる。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
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