Porphyromonas gingivalis由来のペプチジルアルギニンデアミナーゼによるヒトフィブリノゲンおよびα-エノラーゼのシトルリン化:関節リウマチの自己免疫における意義
Peptidylarginine deiminase from Porphyromonas gingivalis citrullinates human fibrinogen and α-enolase: implications for autoimmunity in rheumatoid arthritis
Wegner N, Wait R, Sroka A, Eick S, Nguyen KA, Lundberg K, Kinloch A, Culshaw S, Potempa J, Venables PJ.
Imperial College London, London, UK.
目的
関節リウマチ(RA)におけるシトルリン化蛋白に対する免疫寛容の破綻の機序の候補として、歯周病の原因菌であるPorphyromonas gingivalisによる蛋白シトルリン化について検討すること。
方法
P. gingivalisおよびその他10種類の口腔細菌から得た細胞抽出物に免疫ブロット法を実施し、内因性のシトルリン化蛋白の発現を解析した。細菌由来のペプチジルアルギニンデアミナーゼ(PAD)またはジンジパインを欠損したP. gingivalisのノックアウト株を作製して、シトルリン化におけるこれらの酵素の役割を評価した。野生株とノックアウト株の生菌を蛋白と共にインキュベートし、免疫ブロット法と質量分析法で生成物を分析することにより、P. gingivalisによるヒトフィブリノゲンおよびα-エノラーゼのシトルリン化について調べた。
結果
P. gingivalisでは内因性蛋白のシトルリン化が多く認められたが、その他の口腔細菌では認められなかった。細菌のPAD遺伝子の欠失により蛋白シトルリン化が完全に阻害された。アルギニンジンジパインが不活化されるとシトルリン化の抑制が認められたが、リジンジンジパインの場合には認められなかった。フィブリノゲンまたはα-エノラーゼを野生型のP. gingivalisと共にインキュベートすると、蛋白が分解されて生成したペプチドがカルボキシ末端アルギニン残基の位置でシトルリン化されることが、質量分析法によって確認された。
結論
本研究の結果から、検討した口腔病原菌の中では、P. gingivalisのみが蛋白をシトルリン化する能力を有していることが示された。さらに今回、P. gingivalisがアルギニンジンジパインによるアルギニンのC末端側ペプチド結合の蛋白質切断と、その後の細菌由来のPADによるカルボキシ末端アルギニンのシトルリン化により、シトルリン化された宿主ペプチドを速やかに生成することも示された。本研究の結果から、P. gingivalisを介した細菌および宿主の蛋白のシトルリン化が、RAにおける自己免疫応答を誘発する抗原を産生する分子機序であるという、新しいモデルが示唆される。
コメント
関節リウマチの診断において、今や自己抗体である抗CCP抗体の存在意義は大きく、特にリウマチ因子(RF)が陰性の場合や、早期リウマチ診断においても不可欠である。しかしRAにおいて、フィブリノゲンやα-エノラーゼのような間質蛋白がシトルリン化される機序は不明であった。今回、本報告により歯周病菌のP. gingivalisが細菌由来のPADにより宿主蛋白をシトルリン化させることが明らかとなった。
これまでRA発症の原因は不明であったが、本研究によりP. gingivalisの感染が病因の1つである可能性が示唆されたことは極めて有意義である。ただし、自己抗体としての抗CCP抗体の発現機序については明らかにされていない。今後RA患者におけるP. gingivalisの感染とHLAを含む自己蛋白との関連についての疫学調査が必要である。
監訳・コメント:大阪大学大学院 工学研究科 吉崎 和幸先生
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