ギラン・バレー症候群と2009年パンデミックインフルエンザA(H1N1)型のアジュバント添加ワクチンとの関係:ヨーロッパにおける国際共同症例対照研究
Guillain-Barre syndrome and adjuvanted pandemic influenza A (H1N1) 2009 vaccine: multinational case-control study in Europe
Dieleman J, Romio S, Johansen K, Weibel D, Bonhoeffer J, Sturkenboom M; and the VAESCO-GBS Case-Control Study Group.
Department of Medical Informatics, Erasmus University Medical Center, Rotterdam, Netherlands.
BMJ. 2011 Jul 12;343:d3908. doi: 10.1136/bmj.d3908.
目的
2009年パンデミックインフルエンザA(H1N1)型のアジュバント添加ワクチンとギラン・バレー症候群との関係を検討すること。
デザイン
症例対照研究。
地域
欧州5カ国。
対象
ギラン・バレー症候群およびその亜型であるミラー・フィッシャー症候群を有し、1人以上の対照をマッチさせた患者104人。症例の状態は、Brighton Collaboration基準に従って分類した。対照群は、年齢、性別、指標日、および国に関して症例とマッチさせた。
主要評価項目
パンデミックインフルエンザのアジュバント添加ワクチン接種後のギラン・バレー症候群についての相対リスクの推定値。
結果
症例の組み入れおよびワクチンの接種率には国ごとで大きなばらつきがみられた。もっとも多く用いられたワクチンはアジュバント添加ワクチン(PandemrixおよびFocetria)であった。すべての国について補正せずにプールしたリスクの推定値は2.8であった(95%信頼区間[CI]1.3〜6.0)。インフルエンザ様疾患および上気道感染症の罹患状況、ならびに季節性インフルエンザワクチンの接種状況について補正すると、パンデミックインフルエンザワクチンのアジュバント添加接種によるギラン・バレー症候群の発病リスクの上昇はみられなかった(補正オッズ比1.0、95%CI 0.3〜2.7)。この95%信頼区間から計算すると、100万人にワクチン接種を行った場合、ワクチン接種の絶対的効果は、接種後6週間以内に回避されるギラン・バレー症候群の症例数が1例から3例の範囲になると推測される。
結論
パンデミックインフルエンザワクチンの接種後にギラン・バレー症候群発症のリスクに有意な上昇はみられなかったが、上限値である2.7倍のリスク上昇を当てはめると、ワクチン接種を受けた100万人あたりギラン・バレー症候群の超過症例が3例生じる可能性は否定できなかった。パンデミックインフルエンザワクチンとギラン・バレー症候群との関連を検討する際は、インフルエンザ様疾患および上気道感染症、季節性インフルエンザワクチンの接種、および暦日数を考慮することが重要である。
コメント
ギラン・バレー症候群は原因不明の難病である。原因として発病前に消化器系ないし呼吸器系の感染症を有している者が多く、免疫学的な作用機序が考えられており、これまでにインフルエンザの予防接種と関連するとの報告もある。本論文は、2009年のインフルエンザ流行においてアジュバント添加ワクチン接種により罹患率が上昇していないかを検討したものである。ギラン・バレー症候群の罹患率は10万人年あたり0.4〜4と低いため、症例対照研究が行われた。その結果は、ワクチン接種の影響はあまりないというものであった。しかし、症例対照研究による結果であることや、感染症罹患などの交絡要因などが十分に補正されていない可能性もあり、本論文だけで結論づけられるわけではないが、一応の評価を行うことができたと言えよう。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
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