関節リウマチの滑膜内におけるTh17の分化に果たすオステオポンチンの役割
Role of osteopontin in synovial Th17 differentiation in rheumatoid arthritis
Chen G, Zhang X, Li R, Fang L, Niu X, Zheng Y, He D, Xu R, Zhang JZ
Institute of Health Sciences, Shanghai Institutes of Biological Sciences, Chinese Academy of Sciences, Shanghai JiaoTong University School of Medicine, and Shanghai Institute of Immunology, Shanghai, China.
Arthritis Rheum. 2010 Oct;62(10):2900-8
目的
関節リウマチ滑膜内で異常な産生を示すオステオポンチン(OPN)は、関節リウマチ(RA)において重要な役割を果たしていると考えられている。本研究の目的は、関節リウマチ滑膜内におけるTh17細胞の分化および蓄積に果たすOPNの役割を調べることであった。
方法
RA患者または対照健常者に由来する末梢血単核細胞と精製CD4+ T細胞を用いて、in vitroでOPNの作用を調べた。酵素免疫測定法(ELISA)および定量的PCR法によりサイトカインの発現を調べた。細胞内染色およびフローサイトメトリーを用いて、Th17細胞の割合およびOPN受容体の有無を調べた。免疫ブロット法およびクロマチン免疫沈降法により、シグナル伝達および分子事象の解析を行った。
結果
OPN値は、RA患者の滑液中におけるインターロイキン-17(IL-17)の産生およびTh17細胞の頻度と有意に相関していた。RAの滑液中で産生された内因性OPNは、T細胞内におけるIL-17の顕著な産生亢進の原因となっており、抗OPN抗体によってこの亢進は阻害された。Th17の分化に対するOPNの作用は、IL-6/STAT-3経路または他のサイトカインとは独立した機序を介したものであり、これには特にOPN受容体であるCD44およびCD29と、転写因子であるレチノイン酸関連オーファンレセプター(ROR)が関係していた。さらにOPNは、主としてCD4+ T細胞内でCD44結合ドメインを介してIL17A遺伝子プロモーターのH3アセチル化を誘導し、これによりIL17A遺伝子座とRORとの相互作用が可能となることが明らかとなった。
結論
本研究から、関節リウマチの滑膜炎におけるTh17の分化に果たすOPNの重要な役割を示す新たな証拠が示された。
コメント
関節リウマチの発症および炎症状態の持続には免疫異常が基本的に存在し、特にT細胞の中でもTh1あるいはTh17の活性化が関与していると考えられている。最近その存在が知られたTh17細胞はTGF-βとIL-6またはIL-1等によりTh0細胞から分化すると考えられ、細胞内ではROR-γ転写因子の活性化が重要と言われている。本研究によって、上記の機序とは異なり、オステオポンチンが細胞表面のCD44を介してROR-γ転写因子を活性化させ、IL-17A分子の発現を誘導すること、またTh17細胞の分化を誘導することが新たに示された。以上のことから、関節リウマチの滑膜において、IL-6、TGF-β等のサイトカインとは異なるオステオポンチンの病態の存在が示され、新たな治療標的因子にもなりうることが示唆された。
監訳・コメント:大阪大学大学院 工学研究科 吉崎 和幸先生
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