クローン病のDNAに基づいたリスク評価結果を伝えることが禁煙に及ぼす影響:無作為化比較対照試験
Effect of communicating DNA based risk assessments for Crohn’s disease on smoking cessation: randomised controlled trial
Hollands GJ, Whitwell SC, Parker RA, Prescott NJ, Forbes A, Sanderson J, Mathew CG, Lewis CM, Watts S, Sutton S, Armstrong D, Kinmonth AL, Prevost AT, Marteau TM.
Department of Psychology (at Guy's), Section of Health Psychology, King's College London, London SE1 9RT, UK.
BMJ. 2012 Jul 20;345:e4708. doi: 10.1136/bmj.e4708.
遺伝子分析でクローン病発症のリスクが明らかになっている。そのリスクを伝えることが健康行動、ここでは禁煙行動に影響するのかを無作為化比較対照試験で検証したものである。
対象は、英国のクローン病患者の家族で、発端者の第一度近親者の喫煙者497人である。DNA解析によるリスク評価を行った251人中209人(DNA群)、標準的なリスク評価を行った246人中217人(非DNA群)を比較して評価した。
方法は、「非DNA群」にはクローン病の家族歴と喫煙状況について説明した小冊子を郵送した。「DNA群」には、それに追加してNOD2遺伝子型に関するDNA解析の結果を提供した。その後、カウンセラーが参加者に電話をかけ、小冊子の内容の確認および禁煙の簡潔な標準的介入を行った。禁煙の評価は6ヵ月の時点で、24時間以上の禁煙の有無で行った。
結果は、24時間以上禁煙の割合に群間の差は認められなかった[DNA群で35%(209例中73例)に比べ、非DNA群で36%(217例中78例)(群間差−1%、95%信頼区間−10%〜8%、P=0.83)]。
つまり、クローン病患者の近親者に、DNAによるリスク評価結果を追加して伝えても、喫煙行動変化の動機づけになっていなかった。今回の知見から、健康に関連した行動変化の効果的な動機づけとしてDNA検査を用いることの裏付けが得られなかった。
コメント
健康リスク情報を与えるだけでは人々の健康行動を変えることができないことが知られている。しかし、遺伝子検査の結果を提供すると、健康行動に影響を与えることができるのかをみようとしたものである。20倍以上クローン病発病リスクの高い集団に対して遺伝子情報を提供しても健康行動にほとんど影響を与えていなかった。遺伝子検査の活用方法として、健康行動に影響を与えることができると検査会社により宣伝されているが、健康教育の手段として検査を行うことの意義は乏しいというのが本研究の結論であった。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
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