バクテリアルトランスロケーションを増悪させる遺伝感受性はクローン病患者の生物学的療法に対する反応に影響する
Genetic susceptibility to increased bacterial translocation influences the response to biological therapy in patients with Crohn's disease.
Gutiérrez A, Scharl M, Sempere L, Holler E, Zapater P, Almenta I, González-Navajas JM, Such J, Wiest R, Rogler G, Francés R.
Hospital General Universitario de Alicante, , Alicante, Spain.
Gut. 2013 Feb 1. [Epub ahead of print]
クローン病の原因としてNOD2/ATG16L1遺伝子変異が挙げられる。そこでクローン病患者にみられるバクテリアルトランスロケーション(細菌の腸管外組織への移行)がNOD2/ATG16L1遺伝子変異型の患者で促進されているかどうか、また抗TNFα抗体(インフリキシマブ/アダリムマブ)による治療効果に影響を及ぼすかどうか調べた。
179例のクローン病患者を調べた結果、活動期患者の44%に細菌DNAが血液中に認められたのに対し、寛解期患者では23%であった(P=0.01)。NOD2変異型(オッズ比[OR]4.8、95%信頼区間[CI]1.1〜13.2、P=0.001)、ATG16L1変異型(OR 2.4、95%CI 1.4〜4.7、P=0.01)、および両方の変異をもつ患者(OR 12.6、95%CI 4.2〜37.8、P=0.001)において、それぞれ血液中の細菌DNAの存在との関連がみられた。細菌DNAには疾患活動性との関連(OR 2.6、95%CI 1.3〜5.4、P=0.005)がみられた。NOD2変異またはATG16L1変異あるいはその両方と、疾患活動性との間に関連はみられなかった(P=0.19)。NOD2変異型患者において、分離した好中球の貪食作用および殺菌作用の減少、細菌DNAに反応したTNFα濃度の増加、投与した抗TNFα抗体のトラフ濃度の低下が認められた。NOD2変異型患者では生物学的療法を強化した患者の割合が著しく高かった。
これらの結果から、一部のクローン病患者にはより積極的な治療を行い、炎症の程度を抑え、再燃のリスクを減らす必要があることが示唆される。
コメント
クローン病患者治療に生物学的製剤の抗TNFα抗体の有効性が知られているが、効果が得られない症例も存在し、この原因の追究が望まれていた。このたび、患者の遺伝子変異による可能性が示唆された。NOD2またはATG16L1遺伝子の変異型で細菌DNAの血中へのトランスロケーションがより高率にみられる患者が認められ、それらの患者では好中球の貪食能、殺菌能の低下とともに血中TNFαの増加、さらに抗TNFα抗体の血中濃度の低下が認められた。このことから効果が不十分な例では抗TNFα抗体の投与量の増加により効果を回復させることが可能ではないかと示唆された。
監訳・コメント:大阪大学大学院 工学研究科 吉崎 和幸先生
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