関節リウマチの抗腫瘍壊死因子療法による悪性黒色腫の発症リスクの検討:スウェーデンの地域住民に基づいた全国的な前向きコホート研究
Rheumatoid arthritis, anti-tumor necrosis factor therapy, and risk of malignant melanoma: nationwide population based prospective cohort study from Sweden
Raaschou P, Simard JF, Holmqvist M, Askling J; ARTIS Study Group.
Clinical Epidemiology Unit, Department of Medicine Solna, Karolinska Institutet, SE-171 76, Stockholm, Sweden.
BMJ. 2013 Apr 8;346:f1939. doi: 10.1136/bmj.f1939.
関節リウマチの腫瘍壊死因子(TNF)阻害剤を用いた治療による悪性黒色腫の潜在的リスクをみた研究である。
対象は、2001〜2010年のスウェーデンの全国の地域人口データベースに登録されていた人の中からTNF阻害剤治療を受けた関節リウマチ患者(n=10,878)、TNF阻害剤治療を受けたことのない関節リウマチ患者(n=42,198)、一般集団の対照者(n=162,743)を選んで、コホート的に分析を行った。
主要評価項目は浸潤性黒色腫の罹患とした。副次的評価項目は、上皮内黒色腫、続発性原発黒色腫、または全部位の悪性腫瘍の発症とした。浸潤性黒色腫の件数は、生物学的製剤治療を受けたことのない患者では113件、一般集団の対照者では393件であった。
生物学的製剤治療を受けたことのない患者は、一般集団に比べ黒色腫のリスクが有意に上昇してはいなかった(ハザード比1.2、95%CI:0.9〜1.5)。TNF阻害剤治療を受けた患者では38件で、生物学的製剤治療を受けたことのない患者に比べ、黒色腫のリスクが上昇していた(HR 1.5、95%CI:1.0〜2.2)。
続発性原発黒色腫のリスクは、TNF阻害剤治療患者と治療を受けたことのない患者ではリスクの有意な上昇は認められなかった(HR 3.2、95%CI:0.8〜13.1)。TNF阻害剤治療を受けた患者では、悪性腫瘍の全般的なリスクの上昇は認められなかったが、浸潤性黒色腫の相対リスクが50%上昇していた。
これらの所見は、臨床診療で使用されるTNF阻害剤の便益評価には顕著な影響をもたらす可能性はないが、その他の黒色腫のリスクを有する患者では適応範囲の見直しが必要かもしれない。
コメント
関節リウマチのような免疫反応による疾患患者に対して、生物学的製剤は救世主のような治療薬剤である。しかし、生物学的製剤は特定の免疫反応を選択的に抑えるものではないので、感染症の発症リスクを高めること、がんの罹患率を高めることがこれまでに示されてきた。研究方法は、大規模コホートを用いたものであり、信頼性は高いと考えられる。本研究では、黒色腫のリスクを検討し、そのリスクが有意に上昇していないとの結果を示している。しかし、有意ではないがリスクを高める方向にあることから、生物学的製剤を使用している患者に対しては、主治医は常に全身の健康観察をして欲しいものである。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
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