NLRP3インフラマソームの続き:自己炎症性疾患研究の展開
Beyond the NLRP3 inflammasome: autoinflammatory diseases reach adolescence.
Gattorno M, Martini A.
G. Gaslini Institute, Genoa, Italy. marcogattorno@ospedale-gaslini.ge.it
Arthritis Rheum. 2013 May;65(5):1137-47. doi: 10.1002/art.37882.
15年前、家族性地中海熱(FMF)の原因遺伝子がMEFVであることが明らかになった。これが、自然免疫系調節異常により起こる、自己炎症性疾患と総称される数多くの遺伝子疾患に関する分子異常の解明への一歩となった。
自己炎症性疾患は一般的に周期性発熱と定義されていた。内因性や外因性の刺激に対して異常に活性化した自然免疫系細胞が主要な病因であることが示された。
自己炎症性疾患のプロトタイプとして、NLRP3遺伝子(NLRP3インフラマソームの重要な構成蛋白質であるクリオピリン)変異が原因の少数の疾患群が挙げられる。細胞質内蛋白質複合体であるインフラマソームの活性化メカニズムの解明が、稀な遺伝性疾患だけでなく広範囲に及ぶ多因子疾患における、炎症研究での画期的な出来事となった。この15年間に、他にも多くの自己炎症性疾患とそれに関する遺伝子異常が明らかにされた。
自己炎症性疾患研究は新たなステップに移行している。
CAPS(クリオピリン関連周期熱症候群)の研究から、自然免疫におけるNLRP3インフラマソームの中心的な役割が明らかになった。さらに、NLRP3インフラマソームの機能獲得型遺伝子変異が起こっているCAPSだけでなく、痛風における尿酸ナトリウムのようにDAMP(damage-associated molecular patterns)によりNLRP3インフラマソームが直接活性化されている場合においても、IL-1が治療標的として適切であることが特定された。
他の単一遺伝子自己炎症性疾患(FMFやTRAPS[TNF受容体関連周期性症候群]など)および多遺伝子自己炎症性疾患(全身型若年性特発性関節炎や再発性心膜炎など)においても、IL-1拮抗薬のめざましい効果が認められているが、その理由は未だに明らかではない。NLRP3以外のインフラマソームが主要な病因である場合や、IL-1Ra(IL-1受容体アンタゴニスト)欠損やIL-36Ra欠損のようにIL-1活性化やIL-1作用を調節する他の因子が関与する可能性も考えられている。
新しい疾患メカニズムの発見により、IL-1αやIL-1受容体アクセサリー蛋白質などの新しい治療標的が同定されると考えられる。これらは、多数の自己炎症性疾患に関与する複数のサイトカイン(IL-1α、IL-1β、IL-36)に共通する標的となる可能性がある。また、プロテアソーム欠損に関連する疾患におけるIFNγ関連遺伝子産物から、新たな特異的治療標的の発見につながる可能性もある。
遺伝学分野での驚くべき技術的進歩(新世代シークエンシング)により、今後数年にわたって、いわゆる「horror autoinflammaticus」に関する新たな遺伝子、疾患、細胞内経路の解明が急激に進むだろう。これにより、多くの慢性炎症性疾患の病因や治療に関する、われわれの現時点での理解が大きく変化するかもしれない。
コメント
自己炎症性疾患の登場は新しい疾患概念を提供するのみならず、臨床医学の主要な進歩の1つである。要約を熟読願いたい。
監訳・コメント:大阪大学大学院 工学研究科 吉崎 和幸先生
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