黒人と白人の高齢者における認知症発症に及ぼす社会経済的格差の影響:前向き研究
Effect of socioeconomic disparities on incidence of dementia among biracial older adults: prospective study
Yaffe K, Falvey C, Harris TB, Newman A, Satterfield S, Koster A, Ayonayon H, Simonsick E; Health ABC Study.
BMJ 2013;347:f7051 doi: 10.1136/bmj.f7051
米国(ペンシルベニア州のピッツバーグおよびテネシー州のメンフィス)の2つの医療施設を使い、一般地域住民の中で研究開始時に認知症が認められなかった2,457人の高齢者(平均年齢:73.6歳、黒人:1,019人[41.5%]、女性:1,233人[50.2%])を12年間(2011年1月まで)追跡した。
認知症の発症評価は、認知症の処方薬剤の有無、入院記録、および包括的な認知スコアをもとにした。分析はCox比例ハザードモデルを用いて変数を逐次加えて行った。期間中に449人(18.3%)の認知症を発症した。
黒人の方が白人と比べ、認知症の発症率が高かった(211人[20.7%]対238人[16.6%]、P<0.001、未補正ハザード比1.44、95%信頼区間1.20〜1.74)。性・年齢、アポリポ蛋白E e4有無、合併症、およびライフスタイル因子などで補正しただけではハザード比は少ししか低下しなかった(1.37、1.12〜1.67)。社会経済的な状況を加えると大きく低下し(1.09、0.87〜1.37)、統計的に有意ではなくなった。
コメント
脳の医学研究により認知症の発症に関する生物学的な理解が少しずつ進んできている。しかし、本研究は認知症の発症が黒人高齢者に多い背後に社会的な要因が関係しているのではないかとの仮説を立てて行ったものである。研究の結果から、白人と黒人の高齢者の認知症の発症率は社会経済的要因を補正するとほとんど差がないことが示された。人種間の認知症の発症格差の縮小のためには経済格差などの社会的な状況の是正も必要であることを示すものであった。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
PudMed: