アルツハイマー病の一次予防の可能性:地域集団ベースのデータの解析
Potential for primary prevention of Alzheimer's disease: an analysis of population-based data
Norton S1, Matthews FE, Barnes DE, Yaffe K, Brayne C
1Psychology Department, Institute of Psychiatry, King's College London, London, UK.
Lancet Neurol. 2014 Aug;13(8):788-94. doi: 10.1016/S1474-4422(14)70136-X.
アルツハイマー病の原因の半分以上が改善可能な危険因子に起因している可能性があることを示した論文である。本研究では、世界、米国、ヨーロッパ、および英国におけるアルツハイマー病の人口寄与危険度(PAR)を、メタアナリシスからのアルツハイマー病と関連する確たるエビデンスがある7つの改善可能な危険因子(糖尿病、中年期の高血圧、中年期の肥満、運動不足、抑鬱、喫煙、および低学歴)をもとに推定した。危険因子に関連する基本データは2006年版の英国健康調査のデータを用いた。
世界全体では、アルツハイマー病の最も高い推定PARは低学歴であった(19.1%、95%CI 12.3~25.6)。米国、ヨーロッパ、英国で最も高い推定PARは運動不足であった。そのPARは米国(21.0%、95%CI 5.8~36.6)、ヨーロッパ(20.3%、5.6~35.6)および英国(21.8%、6.1~37.7)であった。独立性を想定した場合の7危険因子による世界の総合的なPARは49.4%(95%CI 25.7~68.4)であった。危険因子間の関連を補正すると推定値は28.2%に減少した(95%CI 14.2~41.5)。米国、ヨーロッパ、および英国の総合的なPAR推定値は約30%であった。7危険因子を10年ごとに10%減少させると2050年にアルツハイマー病の罹患を世界では8.3%減少させることが可能と推定された。
本研究の推定から危険因子間の非独立性と仮定すると世界のアルツハイマー病症例の約3分の1は改善可能な危険因子に起因していると考えられた。アルツハイマー病の発症率は、教育を受ける機会の改善、および血管系危険因子(運動不足、喫煙、中年期の高血圧、中年期の肥満、および糖尿病など)の減少と鬱病の罹患を減少させることにより減少させうる可能性があることが示唆された。
コメント
世界人口の高齢化に伴い、アルツハイマー病は世界的に大きな健康課題となっている。そのアルツハイマー病の患者数は生活習慣病の対策を行うことにより減少させうる可能性があることを示した論文である。これまでがん、脳卒中、糖尿病などの生活習慣病は疾患ごとに個別に対策が講じられてきたが、WHOは近年NCD(Non communicable diseases)として一括りにして総合的に、生活習慣病に対し社会的介入を行う保健戦略を推奨している。本研究の結果はアルツハイマー病もNCD対策を進めることにより増加していく患者数を減らしうる可能性を示唆するものであった。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
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