都市部において嗅覚障害は認知機能低下およびアルツハイマー型認知症を予測する
Olfactory deficits predict cognitive decline and Alzheimer dementia in an urban community
Devanand DP1, Lee S2, Manly J2, Andrews H2, Schupf N2, Doty RL2, Stern Y2, Zahodne LB2, Louis ED2, Mayeux R2. 1From the Division of Geriatric Psychiatry, Department of Psychiatry (D.P.D.), Department of Neurology and the Gertrude H. Sergievsky Center and the Taub Institute for Research on Alzheimer's Disease and the Aging Brain (J.M., H.A., N.S., Y.S., L.B.Z., E.D.L., R.M.), College of Physicians and Surgeons, Columbia University, New York; Division of Biostatistics (S.L.), New York State Psychiatric Institute and Columbia University, New York; and University of Pennsylvania (R.L.D.), Philadelphia. dpd3@columbia.edu.
Neurology. 2014 Dec 3. pii: 10.1212/WNL.0000000000001132. [Epub ahead of print]
将来の認知機能低下およびアルツハイマー型認知症診断の予測において、ベースラインの臭気同定障害の予測有用性を検討することを目的とした。ニューヨーク市、マンハッタン北部の多民族地域コホートにおいて、認知症を有さない参加者1,037例を対象に、40項目のペンシルベニア大学嗅覚検査(University of Pennsylvania Smell Identification Test:UPSIT)を用いた評価を実施した。
ロジスティック回帰解析において、ベースラインのUPSITスコアが低いことは認知機能低下と関連し、共変量を考慮後も有意であった(1ポイントあたりの相対リスク1.065、95%CI 1.034〜1.095、P<0.0001)。UPSITは認知機能低下を予測したが、Selective Reminding Testの総即時記憶はこれを予測しなかった。追跡調査中、参加者101例がアルツハイマー型認知症に移行した。離散時間生存分析において、ベースラインのUPSITスコアが低いことはアルツハイマー型認知症への移行と関連し、人口統計学、認知、および機能に関する共変量を考慮後も有意であった(1ポイントあたりのハザード比1.072、95%CI 1.036〜1.109、P<0.0001)。
認知機能低下の予測において、臭気同定障害は、言語エピソード記憶よりも優れ、アルツハイマー型認知症の早期バイオマーカーとして、治療試験や予防試験に利用できる可能性がある。
コメント
臭いの同定能力の低下がアルツハイマー型認知症の発症予測因子の一つであることを指摘した論文である。アルツハイマー型認知症などのいまだ神経細胞の崩壊機序が定かではない神経変性疾患において、主症状が出現する以前の段階での診断は、疾患修飾的治療法の開発や予防上重要な点である。また、その因子が、より疾患特異的であり、感度が高値であればさらに結構である。今回の臭いに関してはパーキンソン病やレビー小体型認知症でも言われており、疾患特異性は少ないかもしれない。また、早期に診断してもこの段階ではたして臨床試験に協力してもらえるのか、さらに、いたずらに認知症に対する恐怖を増すだけではないのかなど、新たな倫理を中心とした問題点の発現も予想される。しかし、サブカルチャーの代表である医療に関する検討をまさに多民族地域で実施した点、既報告は軽度認知症からアルツハイマー型認知症への移行が多いのに比較し、認知症のないコホートで検討したという広範性を持つ点などに興味があり取り上げた。
監訳・コメント:大阪府立急性期・総合医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
PudMed: