環境リスク因子と多発性硬化症:システマティックレビューおよびメタ解析の包括的レビュー
Environmental risk factors and multiple sclerosis: an umbrella review of systematic reviews and meta-analyses
Belbasis L1, Bellou V, Evangelou E, Ioannidis JP, Tzoulaki I.

1Department of Hygiene and Epidemiology, University of Ioannina Medical School, Ioannina, Greece.
Lancet Neurol. 2015 Mar;14(3):263-73. doi: 10.1016/S1474-4422(14)70267-4. Epub 2015 Feb 4.
多発性硬化症の原因として環境曝露要因と遺伝的要因の関与が考えられてきたが、信頼できる単一の疫学研究報告がない。本研究は、2014年11月22日までの研究論文をシステマティックレビューおよびメタ解析して、その要因を検討したものである。それぞれのメタ解析に関して、変量効果モデルと固定効果モデルを用いて、95%信頼区間と95%予測区間を推定した。416の一次研究論文を含んでいる44のメタ解析の論文を選んで解析した。
予防接種、併存疾患、手術、外傷、環境要因曝露、生化学バイオマーカー、感染バイオマーカー、および筋骨格バイオマーカーなどがリスク因子として示唆されていた。44のメタ解析のうち11は変量効果モデルでP値が0.001未満であった。11のうち3つ研究のみが1,001例以上を対象として、95%予測区間でヌル値が除外され、大きな不均一性、小規模研究効果、および過剰な有意差は示唆されなかった。この3つ研究論文のメタ解析により、有意なリスク要因であったものは、エプスタイン・バーウイルス核抗原(EBNA)に対するIgG血清陽性(変量効果オッズ比[OR]4.46、95%CI 3.26〜6.09)、伝染性単核球症(2.17、1.97〜2.39)、および喫煙(1.52、1.39〜1.66)であった。
コメント
多発性硬化症の有病率は欧米人に高いが、日本人などでは低いため遺伝要因が示唆されている。しかし、多発性硬化症は免疫反応による疾患であることから、何らかの外的要因(環境因子)が介在していると考えられている。これまでの単一の研究では妥当性に疑問がある。一定の基準を満たす信頼できる論文のメタ解析により、エプスタイン・バーウイルスのバイオマーカー(抗EBNA IgG血清陽性)、伝染性単核球症、および喫煙が関係していることが明らかになった。しかし、これが確実なエビデンスであるとするためには良いデザインのもとの研究により示すことが必要である。しかし、難病の疫学研究は、有病率が低いため現実には多施設共同研究が行う必要があり、難しいのが現状である。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
PudMed: