炎症性腸疾患患者における腫瘍壊死因子α阻害薬と重篤感染との関連:デンマークでの全国的コホート研究
Association between tumour necrosis factor-α inhibitors and risk of serious infections in people with inflammatory bowel disease: nationwide Danish cohort study
Nyboe Andersen N1, Pasternak B, Friis-Møller N, Andersson M, Jess T

1Department of Epidemiology Research, Statens Serum Institute, Artillerivej 5, 2300 Copenhagen, Denmark nyna@ssi.dk.
BMJ. 2015 Jun 5;350:h2809. doi: 10.1136/bmj.h2809.
腫瘍壊死因子α(TNF-α)阻害薬を投与された炎症性腸疾患患者では重篤感染症罹患のリスクが増加することは知られている。しかし、全国的なコホートを使った研究はまだほとんどない。デンマークの全国コホートを用いて、2002から2012年の中から交絡要因をマッチさせたコホートを設定した。15から75歳の炎症性腸疾患患者は52,392例であった。
交絡因子を補正するために、まず年齢、性別、罹病期間、炎症性腸疾患サブタイプに基づくマッチングを行い、次いで傾向スコアに基づくマッチングを1対1の比率で行った。最終的に、TNF-α阻害薬投与患者1,543例、非投与患者1,543例を解析対象とした。主要転帰の中で、入院に至る感染を重篤感染として指標とした。リスクの分析はCox比例ハザードモデルを用いて、2つのリスク期間(TNF-α阻害薬投与開始後90日および365日)のハザード比を推定した。
90日間の感染症事例はTNF-α阻害薬非使用患者は33例(発生率9/100例年)、使用患者は51例(14/100例年)であり、ハザード比は1.63(95%信頼区間1.01から2.63)であった。365日間の両者のハザード比は1.27(0.92から1.75)であった。部位別の感染の分析では、皮膚および軟組織感染のみ有意差があった(2.51、1.23から5.12)。
コメント
腫瘍壊死因子-α(TNF-α)抑制剤などの免疫系に作用する生物製剤は炎症性腸疾患を含む免疫性の疾患の治療に有効であるが、重篤な感染症の合併が問題になっている。炎症性腸疾患の患者についてTNF-α抑制剤によるリスクを全国の一般人口集団を対象とした登録者を使ったコホート研究によりそのリスクを評価した。TNF-α阻害薬使用は、投薬開始より最初の90日以内の重篤感染のリスク増加およびその後のリスク低下と関連することが示唆された。本研究の意義は、全国的な大規模な一般人口集団に基づくコホートをもとにリスクを明らかにしたところにある。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
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