慢性疾患を併存する高齢患者におけるガイドライン推奨薬と死亡との関連の検討:地域ベースのコホート研究
Association between guideline recommended drugs and death in older adults with multiple chronic conditions: population based cohort study
Tinetti ME1, McAvay G, Trentalange M, Cohen AB, Allore HG.

1Department of Internal Medicine (Geriatrics), Yale School of Medicine, New Haven, CT 06520, USA mary.tinetti@yale.edu.
BMJ. 2015 Oct 2;351:h4984. doi: 10.1136/bmj.h4984.
アメリカの65歳以上の人々が加入するメディケア医療保険受給者のコホートデータを用いて、複数の慢性疾患を有する高齢者に対するガイドライン推奨薬と死亡との関連を検討した。2011年まで追跡できた高齢者8,578例を対象とした。慢性疾患は、心房細動、冠動脈疾患、慢性腎臓病、うつ病、糖尿病、心不全、高脂血症、高血圧症、および血栓塞栓症などであった。薬剤は、β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、クロピドグレル、メトホルミン、レニン‐アンジオテンシン系(RAS)遮断薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)とセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、スタチン、サイアザイド、およびワーファリンなどであった。半数以上の者が推奨薬を服用していた。
3年の追跡期間中に1,287例(15%)が死亡した。心血管薬のβ遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、RAS遮断薬、およびスタチンは死亡率の低下との関連がみられた。β遮断薬の補正ハザード比は心房細動患者0.59(95%信頼区間0.48から0.72)、心不全患者0.68(0.57から0.81)であった。クロピドグレル、メトホルミン、およびSSRIとSNRIは、死亡率の低下との関連はみられなかった。ワーファリンの補正ハザード比は、心房細動患者0.69(95%信頼区間0.56から0.85)および血栓塞栓症患者0.44(同0.30から0.62)で、死亡リスクの低下と関連がみられた。
心血管薬が生存率に効果があることは無作為化対照試験ですでに確認されていることであるが、それと同じく効果があるとの結果が得られた。併存疾患により薬剤の効果には差異がみられるため、保有する慢性疾患の組み合わせによって推奨薬の治療効果を評価することにより、複数の慢性疾患を有する患者に対する処方の指針を定めることが必要である。
コメント
複数の疾患を持つ高齢者に対して、個々の疾患ごとにガイドラインで推奨している薬剤を投与することが、死亡予後にどのような影響を与えているのかを検討した研究論文である。併存疾患が多くなると、服用薬剤の種類が多くなり、飲み忘れが起こりやすくなり、副作用が出やすくなる。実際に研究して評価する必要がある。死亡率を評価の指標として分析すると、β遮断薬、ワーファリンなどの心血管薬は死亡率低下に寄与していることが明らかになった。超高齢社会となり複数の併存疾患を持つ高齢者が増加している。複数の併存疾患の治療薬を同時に投与することが予後にどのような影響を与えているのか、まだ明らかにされていない。地味な研究であるが、重要な研究分野と思われる。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
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