脊髄性筋萎縮症における血管過少と脊髄の低酸素
Vascular Defects and Spinal Cord Hypoxia in Spinal Muscular Atrophy
Somers E1, Lees RD, Hoban K, Sleigh JN, Zhou H, Muntoni F, Talbot K, Gillingwater TH, Parson SH.

1 Center for Integrative Physiology, University of Edinburgh, Edinburgh, United Kingdom.
Ann Neurol. 2016 Feb;79(2):217-30. doi: 10.1002/ana.24549. Epub 2016 Jan 13.
脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)は世界中で乳児死亡の主要な遺伝的原因である。この疾患は広範に発現する単一の遺伝子(SMN1)の変異に起因し、主要な病理学的特徴として下位運動ニューロンの喪失がみられる。SMAにおいて血管系の欠損が運動ニューロンの病理に寄与するかどうかを検討した。
SMAマウスの骨格筋および脊髄、並びにSMA患者および対照の筋生検を用い、免疫組織化学的に標識された組織に対する定量的形態計測的アプローチにより、毛細血管床の発達と完全性を調査した。ピモニダゾール塩酸塩ベースのアッセイを用いて機能的低酸素を同定した。
症状発現前のSMAマウス(出生後1日目)では筋肉と脊髄の毛細血管床は正常であったが、出生後のそれ以降の発達では対照同腹仔に匹敵することはできなかった。症状がみられた中期および晩期の時点で、2種類の異なるSMAマウスモデルで観察された脈管構造の広がりは、対照マウスの約50%であった。ヒト患者の骨格筋生検でも、重度のSMAでは発達上同様の顕著な血管の過少が確認された。SMAマウスの脊髄の血管過少は、顕著な機能的低酸素および血液脊髄関門の欠損を伴った。
コメント
SMAは筋萎縮性側索硬化症と同じく、運動神経疾患の範疇に入る疾患群であり、私共成人を担当することが多い神経内科医は、長いことSPMA(脊髄性進行性筋萎縮症)と呼んでいた。小児および乳児発症はSMN遺伝子異常によるSMA(I型、II型、III型)が多く、成人発症のSMA IV型を加え、2009年の国際会議以降SMAと呼ばれるようになった。現在でも原因不明の変性疾患であるが、今回の報告で、血管過少は重度な形態のSMAの主要な特徴であり、マウスモデルおよびヒト患者の両方にみられ、運動ニューロンの機能的低酸素をもたらすことが示された。これらのことは、血管の発達異常とその結果の低酸素はSMAの病理発生に寄与している可能性を指摘したものであり、原因究明において大きな成果と考えられ、今後のさらなる発展が期待される仕事であり取り上げた。
監訳・コメント:大阪府立急性期・総合医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
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