医師幇助死:カナダにおけるALSに対する医療提供者の全国調査
Physician-assisted death: A Canada-wide survey of ALS health care providers
Abrahao A1, Downar J, Pinto H, Dupré N, Izenberg A, Kingston W, Korngut L, O'Connell C, Petrescu N, Shoesmith C, Tandon A, Vargas-Santos AB, Zinman L.

1 From Sunnybrook Health Sciences Centre (A.A., H.P., A.I., W.K., N.P., A.T., L.Z.), University of Toronto, Canada; Universidade Federal de São Paulo (A.A.), Brazil; Critical Care and Palliative Care (J.D.), University Health Network, Toronto; Clinic of Neuromuscular & Neurogenetic Diseases (N.D.), CHU de Québec, Faculty of Medicine, Laval University; Department of Clinical Neurosciences (L.K.), Hotchkiss Brain Institute, University of Calgary; Dalhousie University Faculty of Medicine (C.O.), Stan Cassidy Centre for Rehabilitation; Department of Clinical Neurological Sciences (C.S.), Schulich School of Medicine and Dentistry, University of Western Ontario, Canada; and Division of Rheumatology (A.B.V.-S.), Internal Medicine Department, Universidade do Estado do Rio de Janeiro, Brazil.
Neurology. 2016 May 13. pii: 10.1212/WNL.0000000000002786. [Epub ahead of print]
カナダ最高裁判所(Supreme Court of Canada:SCC)が2015年2月に医師幇助死を禁止する刑法の規定を無効にした後の、医師幇助死(physician-assisted death)に関する態度を検討した。
筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)患者の診療に携わる医師および医師・看護師以外の医療従事者(allied health professionals:AHP)を対象にカナダ全国で調査を行い、(1)SCCの決定、(2)医師幇助死に関与する意欲、(3)ALS患者に対する医師幇助死の実行過程に関する意見を調べた。
カナダの大学ALSセンター全15施設のALSに対する医療提供者から、231件の回答を得た。回答率は74%であった。医師およびAHPの大半がSCCの決定に賛成し、病期が中等度から重度のALS患者は医師幇助死を選択できるべきである、と考えていた。しかしほとんどの医師は適格な患者に対し致死的な処方や注射をする意志がなく、大半がこのプログラムを開始する準備ができていないと感じていた。
コメント
ALS患者の25-30%は、人工呼吸器療法を希望され、そのうち約10%の患者は、totally locked-in、すなわち全く意志疎通が取れない状態となる。その場合、医師は尊厳死、すなわち消極的な死の幇助が頭をよぎることもある。日本の現行法では、実行すれば殺人罪に問われる。本報告は、カナダで、幇助死を禁止する法律が無効になった後での、医師などの医療関係者への調査である。ALSに対する医療提供者はSCCの決定を支持し、大半が、身体的または情緒的に苦しんでいる中等度から重度のALS患者は医師幇助死を選択できるようにするべきであると、大半の医師が幇助死を認めている結果であった。今回の報告は、意思表示の可能な程度のALSが対象であるが、その場合でも患者の意志は刻々変化するものである。少なくともtotally locked-inでは、たとえ患者が苦しそうに見えても、実際どのように考えているかは全く判断できない状態であり、第三者的に患者の尊厳を判断できるとは思えない。死の判断は文化、風土により相違があり、日本において現段階では幇助死は認めるべきではなく、今後も議論が必要であろう。
監訳・コメント:大阪府立急性期・総合医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
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