股関節骨折に対する人工股関節全置換術実施状況の格差分析:地域ベース研究
Inequalities in use of total hip arthroplasty for hip fracture: population based study
Perry DC1, Metcalfe D, Griffin XL, Costa ML.

1Institute of Translational Medicine, University of Liverpool, Liverpool, L12 2AP, UK danperry@liverpool.ac.uk.
BMJ. 2016 Apr 27;353:i2021. doi: 10.1136/bmj.i2021.
イギリスの股関節骨折成人患者の治療を行うすべての病院をカバーするイギリス股関節骨折データベース(NHFD)を使い、大腿骨頸部骨折に対して行われている人工股関節全置換術(THA)が、イギリスの国立医療技術評価機構(NICE)が定めたガイドラインに基づいて実施されているのかどうかを調べた。期間は2011年7月1日から2015年4月30日、対象者は病的骨折を除外し、転位関節包内股関節骨折の外科治療を受けた60歳以上の患者とした。
股関節骨折患者114,119例中、THAの受療者は11,683例(10.2%)であった。THA施行のNICE基準を満たしていた患者の32%(6,780例)がTHAを受けていた。しかし、THA施行された患者の42%(4,903例)はNICE基準を満たしていない者であった。NICE適格基準でTHA施行の有無を再帰分割アルゴリズム分析で判別することはできなかった。NICE適格基準を満たしていても、高齢者(オッズ比0.88、95%CI 0.87-0.88)、メンタルテストスコア低値者(正常 vs 境界線、オッズ比0.49、95%CI 0.41-0.58)、アメリカ麻酔科学会スコア低値者(オッズ比0.74、95%CI 0.66-0.84)、男性(オッズ比0.85、95%CI 0.77-0.93)、歩行状態が悪い者(杖歩行 vs 独立歩行、オッズ比0.32、95%CI 0.28-0.35)、低い社会経済的区分者(貧困度最下位vs 貧困度最上位、オッズ比0.76、95%CI 0.66-0.88)では、THA施行がなされていない傾向にあった。また、労働時間内受療者の方が週末受療者よりもTHAを受けている(オッズ比0.90、95%CI 0.83-0.98)など、受療時間でも施行状況は影響を受けていた。
コメント
イギリスでは医療サービスは税金を原資とし、公的医療機関で提供されている。そのために、貧富の差にかかわらず、すべての国民が一定水準の同等の医療サービスを享受できることが目標とされている。患者に対する最適な診断検査や治療基準としてNICEのガイドラインが策定されているが、股関節骨折者に対するTHA施行状況を調査したところ、住む地域、受診する病院、所得水準、受診時間帯などによりばらつきがあり遵守されていなかった。イギリスはすべての国民が同等の医療サービスを受けられる医療制度をつくるために制度改革を繰り返しているが、それでもその実現がまだ難しいことを示している。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
PudMed: