開放方針別にみた精神病院入院患者の自殺および自己退院のリスクの比較:15年間の精神病院の観察に基づく研究
Suicide risk and absconding in psychiatric hospitals with and without open door policies: a 15 year, observational study.
Huber CG1, Schneeberger AR, Kowalinski E, Fröhlich D, von Felten S, Walter M, Zinkler M, Beine K, Heinz A, Borgwardt S, Lang UE.

1Universitäre Psychiatrische Kliniken Basel, Universität Basel, Basel, Switzerland. Electronic address: christian.huber@upkbs.ch.
Lancet Psychiatry. 2016 Sep;3(9):842-9. doi: 10.1016/S2215-0366(16)30168-7. Epub 2016 Jul 28.
1998年1月1日から2012年12月31日の15年間にドイツの21の精神病院の入院349,574件の中から傾向スコアマッチングを用いて145,738患者を抽出し、病棟(病室)の種類(閉鎖、部分閉鎖、開放、およびデイクリニック病棟)、および病院の種類(閉鎖病棟の有無)に分けて、精神病院の入院患者の自殺リスクについて、自己退院、自殺未遂、自殺の転帰が、病棟(病室)の閉鎖の有無で異なるのかについて比較を行った。統計分析は一般化線形混合効果モデルを用いた。開放病棟(病室)の患者では、自殺(OR 1.326、5%CI 0.803-2.113)、自殺未遂(1.057、0.787-1.412)、自己退院後帰院(1.288、0.874-1.929)、および自己退院後未帰院(1.090、0.722-1.659)であった。開放病棟の患者の方が少し高かったが、有意差は認めるほどではなかった。自殺未遂(OR 0.658、95%CI 0.504-0.864)、自己退院後帰院(0.629、0.524-0.764)、自己退院後未帰院(0.707、0.546-0.925)については閉鎖病棟の患者の方が有意に低かった。しかし、自殺既遂率(0.823、0.376-1.766)については有意な差が認められなかった。
コメント
精神病院の入院患者を開放方針で処遇することが広がってきている。一方で、精神病院の入院患者における自殺は大きな課題となっている。患者を開放方針で処遇した場合と、閉鎖方針で処遇した場合で自殺リスクがどう違うのか、ドイツの21の精神病院の15年間の入院患者を用いて病棟閉鎖有無別に自殺発生率を検討した。その結果、大きな差が認められなかった。本研究の結果だけで開放方針で対応することでよいと判断できない。精神病院の病棟構造や処遇などまだ検討課題が多く残されている。明らかになったのは自殺リスクのある人は閉鎖病棟に入れる、と単純に判断して処遇することは適切でないということであった。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
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