脳卒中および白質脳症を伴うカテプシンA関連動脈症
Cathepsin A-related arteriopathy with strokes and leukoencephalopathy (CARASAL)
Bugiani M1, Kevelam SH, Bakels HS, Waisfisz Q, Ceuterick-de Groote C, Niessen HW, Abbink TE, Lesnik Oberstein SA, van der Knaap MS

1 From the Departments of Child Neurology (M.B., S.H.K., H.S.B., T.E.M.A., M.S.v.d.K.) and Pathology (M.B., H.W.M.N.), Neuroscience Campus Amsterdam, VU University Medical Center, Amsterdam; Department of Clinical Genetics (Q.W.), VU University Medical Center, Amsterdam, the Netherlands; Laboratory for Ultrastructural Neuropathology (C.C.-d.G.), Institute Born-Bunge and University of Antwerp, Belgium; Department of Clinical genetics (S.A.M.J.L.O.), Leiden University Medical Center, Leiden; and Department of Functional Genomics (M.S.v.d.K.), Center for Neurogenomics and Cognitive Research, VU University, Amsterdam, the Netherlands.
Neurology. 2016 Sep 24. pii: 10.1212/WNL.0000000000003251. [Epub ahead of print]
本研究の目的は、主に成人発症の白質脳症および脳卒中を有する2家族の臨床的特徴およびMRIの特徴を明らかにし、基礎にある遺伝的原因を全エクソーム解析で同定することであった。
脳画像に基づき、2世帯の40歳以上の家族13例が当該疾患と診断され、MRIは臨床疾患と比べ不釣り合いに重度な白質脳症を示し、臨床像は主に虚血性または出血性脳卒中、緩徐および晩発の認知機能低下、ならびに治療抵抗性高血圧であった。全エクソーム解析で、2世帯に共通し、罹患者側にCTSAのc.973C>Tの変異を分離同定した。
3例の脳剖検は、血管の異常に比べ不釣り合いに広範囲の白質脳症を示した。CTSAはカテプシンAをエンコードし、カテプシンAの機能の1つにエンドセリン1の分解がある。患者において、白質アストロサイトで顕著なエンドセリン1免疫反応がみられ、ミエリン形成前オリゴデンドロサイト前駆体の増加と相関した。この知見は、エンドセリン1がオリゴデンドロサイト前駆体の成熟の阻害を通じて白質脳症に関与することを支持している。
コメント
大脳白質の血管性病変は高齢者では多く見られ、高血圧や糖尿病など様々な病因が指摘されている。うち少数ではあるが、遺伝子の異常により惹起される脳の小動脈病変による皮質下梗塞と白質脳症が少数例報告されている。よく知られているものは、Notch3遺伝子が病因遺伝子である、常染色体優性遺伝性脳動脈症(CADASIL:Cerebral Autosomal Dominant Arteriopathy with Subcortical Infarct and Leukoencephalopathy)で、我が国では指定難病に名を連ねている。本症例は、遺伝形式は同じく常染色体優性遺伝で臨床症状や画像上の特徴は類似しているが、病理学的に血管の異常に比べ不釣り合いに広範囲の白質脳症を示していた。さらに、現在まで知られている遺伝子異常によるもではなく、血管内膜に影響を及ぼすエンドセリン1に関連するカテプシンAをコードするCTSAの変異によるものであることの初めての報告例である。提唱されたCARASALは、成人発症の新しい遺伝性脳小血管疾患の範疇に入るものであり、さらに脳血管異常のほかに、エンドセリン1を介しての白質脳症発症の機序にも示唆をあたえる興味ある論文と考え取り上げた。
監訳・コメント:大阪府立急性期・総合医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
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