英国におけるHIV感染者の社会経済的要因と抗レトロウイルス治療成績との関連:横断的および縦断的分析
Socioeconomic status and treatment outcomes for individuals with HIV on antiretroviral treatment in the UK: cross-sectional and longitudinal analyses
Burch LS1, Smith CJ, Anderson J, Sherr L, Rodger AJ, O’Connell R, Geretti A-M, Gilson R, Fisher M, Elford J, Jones M, Collins S, Azad Y, Phillips AN, Speakman A, Johnson MA, Lampe FC, Antiretrovirals, Sexual Transmission Risk and Attitudes (ASTRA) Study Group

1Department of Infection and Population Health, Royal Free Hospital, London NW3 2PF, UK. lisa.burch.13@ucl.ac.uk -36
保健医療サービスのアクセス条件が同じHIV感染者のART治療の成績が、社会経済的要因にどう影響されているのかを検討した研究である。2011年2月1日から2012年12月31日に、英国の8つのHIV外来診療所の18歳以上のHIV感染者を対象としたASTRA(Antiretrovirals, Sexual Transmission Risk and Attitudes)質問票研究集団に対して質問票を配布し、自記式で回答してもらい、分析を行った。
社会経済的要因の評価項目は、生活困窮度、雇用状態(失業)、住居の有無、および大学教育歴の4つである。治療成績評価は、服薬非遵守、ウイルス値減少欠除、ウイルス値再上昇、としている。6ヵ月以上ARTを実施した者でウイルス量>50コピー/mLであった者を「ウイルス値減少欠如」者、ウイルス量が50コピー以下であった者の中でウイルス量>200コピー/mLとなった者を「ウイルス値再上昇」者とした。3,258例中で2,771例(85%)がART治療を受け、その中のデータが揃っている2,704例を研究対象とした。2,704例中の873例(32%)が服薬非遵守(脱落)者であった。2,405例中の219例(9%)はウイルス値減少欠如者であった。社会経済的要因の4つの指標が低い感染者では、ARTの服薬非遵守、ウイルス値減少欠如であることと強く関連が認められた。
性別、性指向、年齢、人種を補正したハザード比は、生活困窮度2.4(95%CI 1.6−3.4)、失業2.0(1.5−2.6)、住所不定3.0(1.9−4.6)、大学教育なし1.6(1.2−2.2)と社会経済的要因との関連を認めた。1,740例中の139例(8%)でウイルス値の再上昇(3.6/100人年)があった。補正ハザード比は、生活困窮度2.3(95%CI 1.4−3.9)、失業3.0(2.1−4.2)、住所不定3.3(1.8−6.1)、大学教育なし1.6(1.1−2.3)であった。
社会経済要因の指標が低い者でそのリスクが高かった。
コメント
英国における医療サービスは、税金を財源とした「国民保健サービス」で無料提供されているため受診機会は公平な国である。その英国でHIV感染者のARTの治療成績についての社会要因を検討した研究である。HIV感染者のART治療の治療成績は、服薬非遵守、ウイルス値減少欠如、ウイルス値再上昇でみると、経済的に困窮している、失業している、家がない、学歴が低い、の社会経済的要因との関連が強くみられた。HIV感染者の治療には社会経済的要因を踏まえた社会的支援が不可欠であることを示している。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
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