広範囲薬剤耐性(XDR)結核患者と自宅退院結核患者の転帰、感染力、および伝播動態に関するコホート研究
Outcomes, infectiousness, and transmission dynamics of patients with extensively drug-resistant tuberculosis and home-discharged patients with programmatically incurable tuberculosis: a prospective cohort study
Dheda K1, Limberis JD, Pietersen E, Phelan J, Esmail A, Lesosky M, Fennelly KP, Te Riele J, Mastrapa B, Streicher EM, Dolby T, Abdallah AM, Ben-Rached F, Simpson J, Smith L, Gumbo T, van Helden P, Sirgel FA, McNerney R, Theron G, Pain A, Clark TG, Warren RM.

1Division of Pulmonology and UCT Lung Institute, University of Cape Town, Cape Town, South Africa. Electronic address: keertan.dheda@uct.ac.za.
Lancet Respir Med. 2017 Jan 18. pii: S2213-2600(16)30433-7. doi: 10.1016/S2213-2600(16)30433-7. [Epub ahead of print]
rVSV-ZEBOVは水疱性口内炎ウイルスとエボラ・ウイルス表面糖蛋白を使った遺伝子組換え型ワクチンである。ギニアとシエラレオネにおいて非盲検クラスター無作為化試験(Ebola Ça Suffit!)により有効性の評価を行った。患者との接触者、接触者の接触者のリスト(クラスター)を作成し、クラスターの中から1:1の割合で「即時ワクチン接種」群と「遅延ワクチン接種(21日後)」群に無作為に割付けした。ブロックによる無作為化および場所とリングサイズによる階層化を行った。無作為化は途中で安全性監視委員会により中止の指示をされた。主要転帰は無作為化10日以上を経て検査確定例とし、即時ワクチン接種者、遅延ワクチン接種者、および接触者の接触者、の3群間の発症率を比較した。
広範囲薬剤耐性結核(以下XDR結核と略す)は世界的な脅威となっているが、その根絶対策を進めるための疫学情報が不足している。そこで南アフリカ人滞在のXDR結核の登録患者273例を2008年10月1日から2012年10月31日の期間(中央値20.3ヵ月(IQR 9.6から27.8))追跡し、自宅退院患者の地域における伝播動態、感染力、薬剤感受性を検討した。その中で149例に全ゲノム配列分析(以下WGSと略す)、26例に咳エロゾール採取分析(以下CASSと略す)、179例に18薬剤の遺伝子表現型検査を実施した。
273例中203例(74%)は不幸な転帰で終わった(治療失敗、再発、中断、死亡)。273例中172例(63%)は自宅退院させられていた。自宅退院患者を追跡調査した。104例(60%)は予後不良であった。54例(31%)は治療失敗となった。死亡者の生存期間の中央値9.9ヵ月(IQR 4.2から17.4)であった。退院時に塗抹陽性は35例(20%)であった。CASSデータを収集した26例中6例(23%)は培養陽性の感染性咳エロゾール(<5μm)を排出していたが不十分な予防マスクを使用しヒトと接触していた。
菌株のWGSを実施した自宅退院90例(塩基配列データが入手可能)中の17例(19%)とほぼ同一の塩基配列であった地域に発生した20例は二次感染であると示唆された。二次感染例の11例(55%)はHIV重感染例で、追跡終了時には10例(50%)死亡していた。自宅退院した患者の39分離株中22株(56%)は8薬剤以上の薬剤に耐性であった。31株中5株(16%)はリファブチンに感受性、また90%超の株はリネゾリド、ベダキリン、およびデラマニドなどの近年登場したXDR結核治療新薬に感受性であった。
不治のため自宅退院させられていたXDR結核患者の半数以上は平均16ヵ月生存し感染性咳エロゾールを喀出し続け結核を伝播させていることが明らかになった。感染を封じ込めために包括的な薬剤感受性試験体制の整備と新薬の普及が早急に必要である。
コメント
超多剤耐性結核は世界で約50万人にいると推測されている(2014年統計)。アフリカ、ロシア、インド、中国においては薬剤耐性結核患者の30から75%の治療ができていない。世界中に難治性の結核患者が増加していく危険な状況となる可能性がある。超多剤耐性結核菌は感受性菌と比べて感染力が弱いとしてこれまで自宅退院させる方針がとられていたが本研究から感染力は弱いとは言えず、感染拡大していく可能性が高いと示唆された。XDR結核の新薬が登場しているが結核高まん延国において結核菌の感受性菌検査体制を整えるとともにXDR結核患者を新薬で治療できるようにする体制づくりが急がれる。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
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