母親と乳児の遺伝性変異、妊娠前後の選択的セロトニン再取り込み阻害薬の使用、および乳児の先天性心疾患のリスク:地域ベースの研究
Maternal and infant genetic variants, maternal periconceptional use of selective serotonin reuptake inhibitors, and risk of congenital heart defects in offspring: population based study
Nembhard WN1, Tang X, Hu Z, MacLeod S, Stowe Z, Webber D; National Birth Defects Prevention Study.

1Division of Birth Defects Research, Department of Pediatrics, College of Medicine, University of Arkansas for Medical Sciences and Arkansas Children's Research Institute, Little Rock, AR, 72202, USA wnnembhard@uams.edu.
BMJ. 2017 Mar 6;356:j832. doi: 10.1136/bmj.j832.
妊娠前後期の女性の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(以下、SSRI薬)の服用が乳児の先天性心疾患のリスク増加に関連しているかどうかについて米国の全米先天異常予防研究の1997年から2008年のデータから先天性心疾患乳児1,180例と対照乳児1,644例に基づいて検討した。SSRI薬使用の情報は電話面接により収集した。DNAの遺伝子型はIllumina社のGoldenGate custom single nucleotide polymorphism panel用いて決定した。対数線形モデルに基づくハイブリッドデザインを用いて相対的リスクを計算しBayesian偽発見確率変数(BFDP)でリスク確率を評価した。妊娠前後でSSRIの服用母親ではSHMT1(rs9909104)のGG遺伝子型とAG遺伝子型は、AA遺伝子型と比較し乳児先天性心疾患リスクが5.9倍と2.4倍増加していた(BFDP=0.69)。BHMT(rs492842とrs542852)のGG遺伝子型とAG遺伝子型は、AA遺伝子型と比較し、2倍のリスクが高かった(BFDP=0.74と0.79)。MGST1(rs2075237)のCC遺伝子型とAC遺伝子型は、GG遺伝子型と比較して、リスクは8.0倍及び2.8倍高かった(BFDP=0.79)。葉酸経路(MTHFS rs12438477)、ホモシステイン経路(TRDMT1 rs6602178とGNMT rs11752813)、およびトランススルフレーション経路(GSTP1 rs7941395とMGST1 rs7294985)における乳児遺伝子の一塩基多型が先天性心疾患のリスク増加と関連していた。
コメント
米国では、出産年齢のうつ病の有病率が高く、出産前の女性で10から15%、妊婦の8から13%が抗うつ薬を処方されると報告されている。SSRI剤は、妊娠中に処方される最も一般的な抗うつ薬である。セロトニンは心臓形成誘導物質であるため先天性心疾患発生リスクとの関連が疑われている。これまでの疫学研究は一貫した結果が示されていなかったが、本研究でSSRIが母親または乳児の遺伝性変異を生じさせ葉酸経路、ホモシステイン経路、トランススルフレーション経路を介し先天性心疾患リスクを高めている可能性が改めて示された。今後の処方のあり方をどうするのか検討が必要である。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
PudMed: