血中ニューロフィラメント軽蛋白はハンチントン病の神経変性の潜在的バイオマーカーとして使えるのか:後ろ向きコホート分析
Neurofilament light protein in blood as a potential biomarker of neurodegeneration in Huntington's disease: a retrospective cohort analysis
Byrne LM1, Rodrigues FB, Blennow K, Durr A, Leavitt BR, Roos RAC, Scahill RI, Tabrizi SJ, Zetterberg H, Langbehn D, Wild EJ.

1UCL Institute of Neurology, London, UK.
Lancet Neurol. 2017 Jun 7. pii: S1474-4422(17)30124-2. doi: 10.1016/S1474-4422(17)30124-2. [Epub ahead of print]
神経損傷の血液バイオマーカーとして血漿(以下、血中とする)ニューロフィラメント軽蛋白NfL(またはNF-L)がある。ハンチントン病の国際共同研究グループのTRACK-HD研究に登録している症例を使い、これがハンチントン病患者の神経変性進行予後マーカーとして使えるのか検討した。健常対照者とHTT遺伝子CAG伸長変異保因者について、血中のNfL値と、認知機能、運動機能、脳容量などの臨床およびMRI神経画像所見との関連を後ろ向きで比較分析した。また、年齢とCAGリピート数の有無を補正し、ベースラインからの変化を変量効果モデルにより評価した。また、ロンドンのコホート集団の37例(HTT変異保因者23例と対照者14例)について血中と脳脊髄液(以下CSF)中のNfL値の相関関係を分析した。対象としてベースラインおよび追跡調査での血漿検体が入手できた対照者は97例、HTT変異保因者は201例であった。ベースラインの血中のNfL濃度の平均値はHTT変異保因者の方が対照者より有意に高かった(3.63 vs 2.68 log pg/mL、p<0.0001)。次の病期へ移行するにつれて増加していた。血中のNfL値と臨床所見とMRI所見と相関がみられた。縦断的分析で、ベースラインの血中のNfL値は、認知低下、全機能低下、および脳萎縮(尾状核、全脳、灰白質、白質、脳室拡張)と有意に相関していた。ストループテストと全機能を除くすべての変化は、年齢とCAGリピート数に関する補正後も有意であった。3年間の追跡の調査結果から発症前保因者104例のベースラインの血中NfL値が臨床的発症との間に有意な関連があることをみとめた(ハザード比3.29)。変異保因者では、CSF中と血中のNfL値の間の間に相関関係を認めた(r=0.868、p<0.0001)。
コメント
ニューロフィラメントは、神経細胞の主要な細胞骨格となっている神経細胞に特異的に分布している蛋白質である。分子量によりNF-H(分子量200kD)、NF-M(分子量160kD)、NF-L(分子量68kD)に分けられNF-HやNF-Mと認知障害、錐体路症状、錐体外路症状を示す後天性神経変性疾患の一部との間に関連があることが示されている。本論文は、脳科学、生化学、臨床研究、疫学の他分野の研究者からなる国際研究チームにより、血中のNF-Lがハンチントン病の発症や予後との関係を検討したものである。血中のNF-L値はハンチントン病の発症と予後と関連していることが示され潜在的バイオマーカーとして有望であるとのことである。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
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