小児期の外傷関連入院歴を有する若年者の青年期における自傷及び暴力犯罪発生リスク:デンマークの全国コホート研究
Self-harm and violent criminality among young people who experienced trauma-related hospital admission during childhood: a Danish national cohort study
Webb RT1, Antonsen S, Carr MJ1, Appleby L1, Pedersen CB, Mok PLH.

1Centre for Mental Health & Safety, Division of Psychology & Mental Health, School of Health Sciences, Faculty of Biology, Medicine and Health, The University of Manchester, Manchester, UK.
Lancet Public Health. 2017 Jun 1;2(7):e314-e322. doi: 10.1016/S2468-2667(17)30094-4. eCollection 2017 Jul.
青年期後期および成人早期の年代の自傷、対人暴力が社会問題となっている。問題行動を起こす者を予測できると適切な対応につなげることができる。本研究は、小児期の外傷または中毒の入院歴を有する者についての青年期後期および成人早期における自傷、暴力行為を起こすリスクを検討した。研究方法は1977年1月1日−1997年12月31日に生まれたデンマーク人の国民データーベースを国立患者登録データーベースおよび精神疾患中央登録データーベースと照合し、15歳の誕生日までの自傷、対人暴力、事故による外傷、及び中毒により入院した者を割り出した。また全国犯罪者登録データーベースと照合することで15−35歳の時点の自傷と暴力による犯罪歴を有する者を割り出した。男女別に発生率比(以下IRR、相対リスクと称する)および累積発生率値(以下、絶対リスクと称する)を計算した。対象者はデンマーク人1,087,672名であった。外傷関連入院歴を有する者は10%であった(1,087,672人中の105,753人、男性64,454人[11%]、女性44,299人[8%])。男女とも事故が多数を占めていた(男性59,011人[11%]、女性40,756人[8%])。自傷と暴力犯罪歴のあった女性の相対リスクは自傷 1.94[95%CI 1.85−2.02]、暴力犯罪行為2.16[1.97−2.36])、男性は自傷1.61[1.53−1.69]、暴力犯罪行為1.58[1.53−1.63])であり、女性の方が有意に高かった。親の社会経済状態は交絡要因となっていると説明できなかった。若年成人男性の絶対リスクが最も高かったのは、小児期の対人暴力による外傷入院歴者の「暴力犯罪」であった(累積発生率25.0%[95%CI 21.2−28.9])。若年成人女性の絶対リスクが最も高かったのは、小児期に自傷入院経験者の反復自傷であった(累積発生率21.4%[95%CI 19.8−23.1])。小児期に外傷関連入院頻度が高い、また複数回入院歴がある者では、青年期後期や成人早期に重大なリスクの発生率が高かった。特に女性で顕著であった。
コメント
若年期に外傷関連入院歴のある者では、若年成人期の内在的および外在的破壊行動の発生予測の有用なマーカーであることが明らかとなった。若年期の外傷関連入院者に対しては、家族だけの介入だけでは対応が難しく、社会的な支援や関わりが必要であることを示している。日本の若年期の問題行動は家庭ないし学校の問題とされ、そのため社会的な支援体制が発達していない。青年期の若者の暴力、自傷行為、犯罪が増えていく可能性があり、その予防のために若年期の子どもに対する社会的支援体制を整備していく必要がある。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
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