ハンチントン病の進行に関連する遺伝性多様体の同定:ゲノムワイド関連解析
Identification of genetic variants associated with Huntington's disease progression: a genome-wide association study.
Moss DJH1, Pardiñas AF, Langbehn D, Lo K, Leavitt BR, Roos R, Durr A, Mead S; TRACK-HD investigators; REGISTRY investigators, Holmans P, Jones L, Tabrizi SJ.

1UCL Huntington’s Disease Centre
Lancet Neurol. 2017 Sep;16(9):701-711. doi: 10.1016/S1474-4422(17)30161-8. Epub 2017 Jun 20.
ハンチントン病は遺伝子HTTのCAGリピート伸長により引き起こされることがわかっている。しかし、発症年齢や進行度合いを規定している関連遺伝子は明らかにされていない。本研究は病勢進行の新指標となる遺伝マーカーを同定することをめざしたものである。本研究は2つのハンチントン病遺伝子変異保有者の研究コホートを使ったものである。一つはTRACK-HDコホート(以下T研究コホートとする)の2008から11年の218例である。運動、認知、および画像所見の経時的変化を分析している。もう一つは、欧州ハンチントン病ネットワークREGISTRY(以下R研究コホートとする)の2003から13年の1,773例である。この研究コホートの症例についてはゲノムワイド関連解析とメタ解析を行っている。T研究コホートの経時的分析により、運動、認知、および画像のスコアが互いに相関し、病勢進行の指標となりうることが明らかになった。両研究コホートにおいてこれらは進行指標と相関関係(r=0.674)がみられた。発症時の年齢の相関もみられた(各々、r=0.315、r=0.234)。両研究コホートのゲノムワイド解析で進行に関係する有意なシグナルとして第5染色体上のMSH3、DHFR、MTRNR2L2の3遺伝子が浮かび上がった。T研究コホートで進行と関連がみられ、R研究コホートでも小さいが関連がみられた。T研究コホートの一塩基多型(rs557874766)のメタ解析で有意に関連のある変異であった。MSH3遺伝子はアミノ酸変化(Pro67Ala)をコードしていた。T研究コホートでは、このSNP遺伝子はハンチントン病統一評価スケールの総運動スコア(UHDRS)の変化率を0.4ユニット/年(95%CI 0.16-0.66)低下させ、また総機能的能力スコア(UHDRS)の変化率を0.12ユニット/年(95%CI 0.06-0.18)低下させて関連がみられた。発症時年齢補正後も関連性は有意であった。T研究コホートにおける進行指標はメタ解析による機能的多様体と関連し、進行指標は疾病負荷と良好な感度があり、この遺伝子座との関連が大きいことが示唆された。ハンチントン病マウスにおいてMsh3遺伝子を破壊すると体細胞増殖が低下した。今後、遺伝子座を操作することが病気の進行を緩める治療方法となると期待される。
コメント
ハンチントン病の発病に関連する遺伝子がすでに明らかにされているが病気の進行と関係している遺伝子座はわかっていない。ヒトゲノム計画が完了したが単一あるいは数個の遺伝子の異常のみで病気の説明をできるほど単純でないことが明らかとなった。そこで、近年ゲノム全体を巨視的に見渡すゲノムワイド関連解析(GWAS)を使った研究が必要とされ進められている。本研究ではGWASを使うことで、第5染色体上の3遺伝子座が病勢の進行に関係しているといる可能性があることを示したものである。GWASの研究により、病気発症のメカニズムの解明や予防、リスクに応じた適切な治療方法の選択が可能となり、新規の治療法開発につながることが期待されている。しかし、そう単純でないとの考えも芽生えてきている。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
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