シミュレーションモデルによる合併症の有無別にみた外国(米国以外)生まれの居住者に対する潜在性結核感染の検査と治療に関する費用対効果分析
Cost-effectiveness of Testing and Treatment for Latent Tuberculosis Infection in Residents Born Outside the United States With and Without Medical Comorbidities in a Simulation Model.
Tasillo A1, Salomon JA, Trikalinos TA, Horsburgh CR Jr, Marks SM, Linas BP.

1HIV Epidemiology & Outcomes Unit, Section of Infectious Diseases, Boston Medical Center, Boston, Massachusetts.
JAMA Intern Med. 2017 Oct 16. doi: 10.1001/jamainternmed.2017.3941. [Epub ahead of print]
潜在性結核感染(LTBI)の検査と治療は、米国における結核制圧の中心的な手段であるとされている。しかし、合併症を有する米国外生まれ(以下外国生まれ、とする)の居住者にLTBIの検査をし、その陽性者に対して治療することが得策なのかは明らかにされていない。年間3%の感染リスクがあるとの前提をもとに、「合併症なし」、「糖尿病」、「HIV感染」、または「末期腎不全」の疾患を有する者に分け、外国生まれの居住者へのLTBI治療についての政策決定樹をつくり、マルコフモデルにより推計した。感染診断検査の使い方は、「検査なし」、「ツベルクリン反応検査;以下ツ反」、「インターフェロンγ遊離試験:以下IGRA」、「陽性確認(最初にツ反、ツ反陽性の人にはIGRAで確認、両検査が陽性のものをLTBIとする)」、および「陰性確認(最初にIGRA、IGRA陰性者にはツ反確認、いずれかで陽性であればLTBIとする)」に分類した。LTBIの治療方式は、リファペンチンとイソニアジドの2剤による3カ月の内服治療として費用計算をした。結核再燃の1例の発生予防にどの位の検査と治療の件数が必要なのかを質調整生存年(QALY)の差損、生涯医療費の差損、および増分費用効果比(ICER)の点から評価した。発病者を減らす最適な検査を選択する必要費用は増加した。費用対効果の順位は、検査なし、陽性確認、ツ反、IGRAのみ、および陰性確認であった。合併症がない患者ではIGRAの費用対効果が高かった(83,000ドル/QALY)。糖尿病患者では陽性確認は53,000ドル/QALY、IGRAは120,000ドル/QALYであった。HIV患者では陰性確認の費用対効果が高かった(63,000ドル/QALY)。末期腎不全患者では検査なしの費用対効果が高かった。LTBIの有病率が上昇するとツ反の再検率が低下し陽性的中率が高くなるが、それでもIGRAの方が有用であった。合併症なし、糖尿病、およびHIVを有する者の外国生まれ患者10,000例のシミュレーションでは、費用対効果が高い検査が異なっていた。合併症なしの者と糖尿病患者に対してどの検査を選択するのがよいのかは、モデルから明確な結論は出せなかった。しかし、IGRA検査は、末期腎不全患者以外のすべての外国生まれの居住者に対して、約60%強の発病者予防効果があると推計された。外国生まれの者に対しIGRA等の感染診断検査を用いて結核制圧をする政策は合併症のない者、糖尿病患者、およびHIV患者に対しては支払可能金額の100,000ドル/QALY以下に収まるとの結果が得られた。
コメント
2015年には世界では1,040万人が結核に罹患し、180万人が結核で死亡したと報告されている。また世界の3分の1の人が結核の既感染者と推定されている。米国は結核感染者が少ない国であるが、結核の征圧には外国人の既感染者の発病者をどう制御できるかにかかっている。本研究は、外国生まれの居住者に対して感染診断検査をして、発病予防対策をすることが費用対効果の点から推奨できるのかどうかを、推計モデルをつかって検討したものである。結論として、感染診断検査をして感染者に対する治療をする方が、費用対効果の点から推奨できるというものであった。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
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