日本人ALS患者において非翻訳領域リピート伸長がATXN8OS遺伝子と関連する
Noncoding repeat expansions for ALS in Japan are associated with the ATXN8OS gene
Hirano M1, Samukawa M, Isono C, Saigoh K, Nakamura Y, Kusunoki S.

1Department of Neurology (M.H., M.S., K.S., and S.K.), Kindai University Faculty of Medicine, Osakasayama, Japan; and Department of Neurology (M.H., C.I., and Y.N.), Kindai University Sakai Hospital, Japan.
Neurol Genet. 2018 Aug 1;4(4):e252. doi: 10.1212/NXG.0000000000000252. eCollection 2018 Aug.
本研究の目的は、日本人の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者における非翻訳領域リピート伸長の寄与について評価することであった。西洋諸国において孤発性ALSは、C9ORF72遺伝子における非翻訳領域リピート伸長と関連することが多い。脊髄小脳失調症8型(SCA8)も非翻訳領域リピート疾患であり、ATXN8OS遺伝子におけるCTA/CTGのリピート伸長が原因である。脊髄小脳失調症36型は最近同定された疾患で、NOP56遺伝子における非翻訳領域リピート伸長が原因であり、運動ニューロンの関与を特徴とする。
日本人の孤発性ALS患者102例から血液サンプルを採取し、PCR-サンガー法シーケンシングによりATXN8OS遺伝子を、repeat-primed PCR法によりC9ORF72遺伝子およびNOP56遺伝子を解析した。
ALS患者3例(3%)においてATXN8OS遺伝子に変異が認められたが、C9ORF72遺伝子またはNOP56遺伝子に変異のある患者はいなかった。変異陽性の患者では、首の筋力低下または延髄性の症状が優勢という臨床的特徴がみられた。MRIで明らかな小脳萎縮がみられた患者はいなかったが、2例で白質または被殻に無症候性の異常がみられた。
コメント
異常機能の獲得が病態機序として想定される遺伝性疾患の場合、変異遺伝子の発現を選択的に抑制できれば、疾患発症の予防や進行を抑制できる可能性が高い。近年、多くの非翻訳領域RNAが発見され、RNAレベルでの遺伝子発現制御機構の解明が急速に進行し、神経疾患で新規の治療法になりうる。
これら、RNA介在性神経筋疾患に含まれる疾患はSCA31、SCA36、筋強直性ジストロフィー、などが有名であるが、今回解析されたATXN8OS遺伝子におけるCTA/CTGのリピート伸長が原因であるSCA8も含まれる。
本論文により、ALS患者3例(3%)においてATXN8OS遺伝子に変異が認められ、日本人のALS患者における非翻訳領域リピート伸長の重要性を明らかにされ、SCA8の臨床像が拡大された。ALSにおける原因異常蛋白の毒性を緩和させる、新たな治療法の開発に繋がる可能性を示唆する重要な論文と考え取り上げた。
監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生
PudMed: