南アフリカの薬剤耐性結核患者におけるベダキリンの死亡率に及ぼす影響の検討:後ろ向きコホート研究
Effect of bedaquiline on mortality in South African patients with drug-resistant tuberculosis: a retrospective cohort study
Schnippel K1, Ndjeka N, Maartens G, Meintjes G, Master I, Ismail N, Hughes J, Ferreira H, Padanilam X, Romero R, Te Riele J, Conradie F

1Health Economics Unit, School of Public Health and Family Medicine, Faculty of Health Sciences, University of Cape Town, Cape Town, South Africa.
Lancet Respir Med. 2018 Sep;6(9):699-706. doi: 10.1016/S2213-2600(18)30235-2. Epub 2018 Jul 11.
多剤耐性結核患者に対する第IIb相臨床試験において、ベダギリン治療群は対照群と比べて死亡率が高いという結果が報告され、WHOは死亡リスクの高さについて注意喚起している。そこで、南アフリカのリファンピシン耐性結核症例登録(EDRweb)の患者データをもとにベダキリン治療患者の死亡率が本当に高いのかを検証した。分析には国の人口動態統計記録を用いた。治療歴のある患者、若年患者及び75歳以上の患者、リファンピシン耐性記録がない患者を除外し、広範の薬剤耐性を持つ結核患者について、ベダキリン治療群とその他の薬剤治療群との全死因死亡率を比較した。2014年7月1日から2016年3月31日の間に24,014人の結核症例がEDRwebに登録されていたが、その内の19,617例が本分析の適格基準を満たした。その他の治療群の患者は、カナマイシン又はカプレオマイシン及びモキシフロキサシンの投与を受けた。死亡リスクについては、性別、年齢、HIV及び抗レトロウイルス療法の状況、結核の既往歴、有効な識別番号及び治療の年と領域に関する潜在的な交絡因子を傾向スコアの五分位の層で調整したハザード比により判定した。
ベダキリン含む治療者は、多剤耐性又はリファンピシン耐性患者18,542例中の743例(4.0%)、広範囲薬剤耐性結核患者1,075例中の273例(25.4%)であった。死亡者数は、ベダキリン治療群1,016例中の128例(12.6%)、その他の治療群18,601例中の4,612例(24.8%)であった。ベダキリン治療群の死亡のハザード比は、多剤耐性又はリファンピシン耐性結核患者では0.35(95%CI:0.28 - 0.46)、広範な薬剤耐性結核患者では0.26(0.18 - 0.38)であった。ベダギリン治療群の方が死亡リスクが有意に低いという結果であった。
コメント
2016年のWHOの報告では世界でリファンビシン耐性結核患者が60万人、そのうち約19万人が亡くなっている。多剤耐性結核患者の治療薬の開発が求められている中で登場した有望な薬剤の一つがベギタリンである。ベギタリンは多剤耐性結核患者に対して結核菌のATP合成酵素を阻害する作用機序の新しい抗結核薬である。既存の抗結核薬とは交叉耐性がなく薬剤感受性菌及び多剤耐性菌いずれに対しても強力な抗菌活性を示し、パーシスターの菌にも有効であるとされている。しかし、Phase2b試験において、ベダギリン使用群の死亡率が高かったという結果が示されていた。本当に死亡率が高いのかを検証するために行われたのが本研究である。
HIV及び広範な薬剤耐性結核の高い有病率の状況の南アフリカにおけて行われた本研究により、ベダキリンを使った治療患者の死亡率が大幅に減少していることが示された。日本でもベダキリンが薬事承認され、2018年2月26日にベダキリンが結核医療の基準に追加されている。その取り扱いが難しく専門病院でのみ使用が認められている。
監訳・コメント:関西大学 社会安全学研究科 公衆衛生学 高鳥毛 敏雄先生
PudMed: