重症筋無力症 myasthenia gravis は、神経と筋との接合部の病気で、骨格筋の易疲労性および筋力低下を主症状とし、寛解、増悪をくり返す。
神経筋接合部における刺激伝達の機能をはたすアセチルコリンが働かず、その分解酵素を抑える抗コリンエステラーゼ剤を投与すると、一時的にせよ、症状の寛解をみるという特徴をもっている。
一方、本症患者血清中には抗アセチルコリン受容体抗体の存在することがわかった。胸腺にあるアセチルコリン受容体が、何らかの侵襲により受容体蛋白に変性が生じ、その結果、受容体に対する自己抗体が産生され、それにより受容体が正常のアセチルコリンと反応できなくなって、神経筋接合部の刺激伝達障害が起こると考えられている。
わが国の有病率は人口10万人に約3人といわれている。男女比は1:2で女性に多く、発病年齢は女性は20歳代、男子は40歳代以降に多いとされている。
本症は、発病年齢、発病様式、侵される筋群、経過、予後などから表2にように分類される。発病頻度は全身型が40〜50%、眼筋型が15〜20%といわれる。なお眼筋型や全身型の寛解期では抗アセチルコリン受容体抗体は検出されないことがある。
1. 症状
骨格筋の易疲労性が主症状である。早朝、起床時には比較的よいのだが、午後、とくに夕方になると脱力は増強する。
もっともよくみられるのは外眼筋麻痺で、眼瞼下垂は特徴的である。
眼球運動障害とそれによる複視も初発症状としてよくみられる。
次に高頻度にみられるのは舌・咽頭筋麻痺である。そのため嚥下、咀しゃく、発語障害がみられる。ときに呼吸筋の麻痺を起こし、呼吸困難となることを急性増悪(クリーゼ)と呼び、緊急に処置しないと危険な状態となる。2. 検査所見
本症では一般血液、尿、髄液などの検査は正常である。補助診断のための検査として次のものがある。
1)テンシロンテスト:テンシロン(Edrophonium chloride)10mgをゆっくり静注し、症状の改善の有無をみる。
2)誘発筋電図反応:本症では1〜5Hzの低頻度刺激で、筋の波形(M波)の減衰(waning)現象がみられる。この場合、テンシロンテストを行い、減衰率が改善すれば、診断はいっそう確実である。
3)抗アセチルコリン受容体抗体:本症では約80%に抗アセチルコリン抗体が認められ、しかも、他の疾患ではほとんどみられないので、その診断的価値は高いといえる。
3. 合併症
本症では胸腺腫の合併がしばしばみられる。胸部X線では15〜30%にみられ、CT検査ではさらに高率に検出されるという。
その他、甲状腺機能亢進症、慢性甲状腺炎、シェーグレン症候群、SLEなど免疫異常を示す疾患との合併が多いようである。