再生不良性貧血aplastic anemiaは骨髄における血球の産出が全般的に低下し、そのために貧血、白血球数減少、血小板数減少がみられる疾患である。
わが国では欧米に比べて頻度が高く、とくに原因不明の特発性が多いとされている。男女差はない。
原因が不明な場合と、各種の薬剤、たとえば鎮痛剤、抗炎症剤、抗生物質などによって骨髄が障害されて起こる二次性の場合とがある。その他、特殊な型として、肝炎のあとに起こる肝炎後再生不良性貧血や発作性夜間血色素尿症(PNH)の所見を示す症例もある。
再生不良性貧血は徐々に起こることが多いようである。そのために、貧血が進行するまで気がつかないことがしばしばである。
1. 貧血症状
貧血の程度が強くなると、動悸、息切れ、顔面蒼白などがみられる。
2. 出血傾向
血小板数減少のため、皮下出血、歯肉出血、鼻出血、血尿、性器出血などが起こる。眼底出血のため、視力障害をみることもある。
3. 易感染症
顆粒球減少のため、感染にかかりやすくなる。発熱、咽頭痛などを訴える。
一般に栄養状態は良好である。病気の初期から、肝脾腫、リンパ節腫脹をみることはそう多くはない。
1. 末梢血液検査
赤血球、白血球、血小板数がすべて減少する、いわゆる汎血球減少症の形をとる。
赤血球数 男性400万以下
女性300万以下白血球数 4000以下
血小板数 10万以下
の場合、汎血球減少症とみなす。
2. 骨髄検査
骨髄穿刺液は外見上ぎらぎら光って見えるが、これは脂肪成分に富んでいるためである。骨髄は低形成のため有核細胞数の著明な減少がみられる。リンパ球系の相対的増加を認める。巨核球数の減少はほぼ全例でみられる。
3. その他
血清鉄値は上昇するが、不飽和鉄結合能は逆に低下する。
59Feを用いるferrokineticsの検索では、59Feの血漿からの消失時間(PID)の延長および末梢赤血球への利用率(赤血球交代率RIT)の低下がみられる。
99mTcコロイドを用いる骨髄シンチグラムでは全身的な造血骨髄の減少を示す。
再生不良性貧血の診断には、末梢血の汎血球減少と骨髄の低形成の所見がもっとも重要である。汎血球減少の程度によって重症度がきめられる(表1)。
重要なことは鑑別疾患である。汎血球減少を呈する疾患は表2に示すように、数多くある。
その中でも臨床上もっとも大切なのは急性白血病である。末梢血中に白血病細胞を認めず、汎血球減少を呈するような白血病との鑑別は困難であり、このようなときは骨髄所見が決め手となる。
鑑別が困難な疾患のもう1つに前白血病状態あるいは骨髄異形成症候群MDSがある。MDSは末梢血では汎血球減少を示すが、骨髄ではむしろ過形成となる。
再生不良性貧血として治療している症例の経過中に発作性夜間血色素尿症(PNH)の所見を示すことがあり、再生不良性貧血-PNH症候群といわれる。
急速に経過して死亡する例から長期間輸血をくり返す例、あるいは寛解する例など、その経過はまちまちである。
重症例の予後は不良である。発病して短期間で死亡することも少なくない。しかし、最近では治療法の進歩によって寛解例が多くなり、日常生活を送ることのできる症例が増加してきた。