筋萎縮性側索硬化症


 運動ニューロンが侵される変性性神経疾患を運動ニューロン疾患 motor neuron disease と総称するが、筋萎縮性側索硬化症 amyotrophic lateral sclerosis(ALS)はその代表的疾患である。進行性の上・下位ニューロン障害を特徴とする。
 下位運動ニューロンのみが侵される場合を脊髄性進行性筋萎縮症 spinal progressive muscular atrophy(SPMA)、延髄球のみの障害を進行性球麻痺 progressive bulbar palsy(PBP)と呼ぶが、この両者とも、いずれはALSに発展することが多いとされている。

頻度

 本症は、通常散発し、その頻度は世界各地でほぼ同じである。しかし、西南太平洋のある地域(グアム、ニューギニア西部)や我が国でも紀伊半島南部では高頻度の発病が知られている。
 一般に、人口10万人当たり2〜7の有病率といわれている。

病因

 原因は不明である。感染、外傷、中毒、栄養・代謝障害などいろいろ検討されているが、まだ定説はない。全症例の数%に家族内発生がみられることから、遺伝関係も注目されている。

臨床像

(1)筋症状

 筋力低下、筋萎縮が主症状である。筋肉がピクピクするという訴え(線維束性攣縮)は病気の初期からみられる。

(2)神経症状

 主病変は脊髄・延髄の運動神経細胞の変性・脱落と錐体路変性である。臨床上、前者は下位運動ニューロン障害を示し、後者は上位運動ニューロン障害となる。
 しかし、仙髄の前角をよく保たれるので、膀胱直腸障害はみられない。
 上位運動ニューロン障害として、腱反射の亢進、ビバンスキー反射などの病的反射が出現し、痙性麻痺を呈する(錐体路徴候)。
 SPMAは、下位運動ニューロン障害だから、腱反射は減弱あるいは低下する(前角徴候)。
 ALSの末期では、上肢が弛緩性、下肢は痙性となることが多いようである。
 初発部位により、次のように分けることができる。

@上肢型:もっとも多いものである。手指の脱力、運動が下手になり、こわばりを訴える。次いで小手筋(指間筋)の萎縮がみられる。通常一側から始まり、同側下肢あるいは対側下肢に及ぶ。

A下肢型:前脛骨筋が侵されますので、尖足(垂れ足)となる。腱反射は消失し、多発性神経炎の病像と類似する。

B球型:構音・嚥下障害を認める。舌萎縮、舌の線維束性攣縮、舌の運動緩慢、軟口蓋の運動低下、咽頭反射も消失する。また、咽頭の異物感を訴えることもある。

C混合型:四肢の症状と球麻痺とが同時に起こる場合をさす。

 本症では眼球運動障害、膀胱直腸障害、知覚異常のみられないことが特徴である。
 本症では、とくに特徴的な血液、髄液の所見はみられない。 
 筋電図では、安静時に fibrillation and fasciculation、随意収縮時に normal motor unit(NMU)の減少がみられる。
 筋力低下、筋萎縮、線維束性攣縮、球症状がみられたとき、本症を疑う。一般に20歳以上にみられ、発病は緩序で、経過は進行性である。
 重症度分類を表1に示す。

予後

 慢性、常時進行性の経過を辿る。従来は2〜3年の経過といわれていたが、10年以上の生存例もある。
 一般に若年発症、上肢型は球型に比し、予後はよいとされている。

 


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