強皮症は皮膚の硬化を主症状とし、全身の諸臓器とくに食道、肺、胃、腸、関節などを侵す原因不明の病気である。厳密には皮膚だけを侵す限局型もあるが、一般に全身型のものを進行性全身性強皮症progressive systemic sclerosis(PSS)と呼び、強皮症といえばこのPSSを指す。
年間発病率は人口100万人に対し4〜15人といわれる。性別では男女比は約1:9で圧倒的に女性に多い病気である。年齢別では35〜54歳に発症のピークがあり、15歳以下や65歳以上の発症は少ないとされている。
1. 初発症状
初発症状としてはレイノー現象が重要である。PSSの患者の約90%はレイノー現象をもって始まるほど、これは大切な症状である。
次いで皮膚のこわばり、むくみ、関節痛などがよくみられる。2. 皮膚症状
皮膚の硬化はある日突然起こるのではなく、浮腫性腫脹が先行する。症状の進み方は3期を経て進むといわれる。むくみは手指、前腕、顔、胸などにみられるが、押してもへこまず、つきたてのお餅のような感触である。とくに手指が腫れると、ウインナー・ソーセージのようにみえることが特徴である(sausage-like finger)。
浮腫は次第に硬さを増し、皮膚をつまむことができなくなる。皮膚の硬化は四肢の末端、とくに手指から左右対称にはじまる(肢端硬化acrosclerosis)。指にみられる強い皮膚硬化を強指症sc-lerodactylyという。さらに硬化が進行するにつれ、指関節の運動制限が起こり、屈曲拘縮をみるようになる。
四肢末端からはじまった硬化は、やがて手、足関節をこえて前腕、上腕、下腿などへ進んで、前胸部、顔面に及ぶ(近位性強皮症proximal scleroderma)。
皮膚硬化が顔面に及ぶと、しわが少なく表情の欠しい顔つきになる(仮面様顔貌masked face)。口は小さく(小口症microstomia)、舌小帯も短縮する。
冬期には、レイノー現象に伴う末梢血管病変のため、指尖部に疼痛の強い難治性の潰瘍ができる。これは治ったあとに虫食い状の瘢痕を残す。
その他、色素沈着、毛細血管拡張など、さまざまな皮膚病変をみる。3. 消化器症状
食道病変が60〜80%と高頻度にみられる。自覚症状として嚥下障害、胸やけ、げっぷなどがみられる。X線上、食道下部2/3の拡張、蠕動低下が特徴的である。
小腸、大腸にも低緊張が認められ、腹部膨満感、交互にくり返す下痢・便秘などがみられる。4. 呼吸器症状
肺病変も頻度が高く(50〜70%)、PSSでは重要な所見である。息切れ、咳嗽などの自覚症状をみる。胸部X線上、両側下肺野からはじまる間質性変化、肺線維症は重要で、進行すると、蜂窩状肺honey comb lungに陥る。
5. その他
心・腎病変はPPS重症例に伴うことが多いようである。心肥大、不整脈、伝導障害などをみることがあり、心不全に陥ってもジギタリス無効のことが多いようである。さらに肺高血圧からくる二次性心病変もある。
腎病変は急速に進行して腎不全になる強皮症腎が有名であるが、我が国ではそう頻度は高くないとされている。
その他、関節症状、筋肉症状もみられる。手指のX線上、末節骨の骨吸収像がみられる。筋力低下もPSSの40%にみられるが、皮膚筋炎、多発性筋炎との合併はしばしばみられる(sclerodermatomyositis)。
厚生省研究班による診断基準を表1に掲げる。
高頻度に検出される自己抗体は抗核抗体である。蛍光抗体法ではspeckled patternが多いとされている。本症に特異的に検出される抗核抗体としては、抗Scl-70抗体がある。抗セントロメア抗体は、CREST症候群を含む軽症型に出現するといわれている。その他、リウマチ因子陽性のみられることもある。
赤沈亢進、CRP陽性、高γグロブリン血症は、他の膠原病と同様によくみられる。
肺機能検査では拡散障害(DLco低下)、拘束性障害(%VC低下)がみられる。
食道、腸X線検査も必要である。
従来から予後不良の疾患と言われていたが、最近では5年生存率80〜90%と向上してきた。
死因は肺線維症、肺感染症、肺性心、腎不全によることが多いようである。