特発性血小板減少性紫斑病 idiopathic thrombocytopenic purpura(ITP)は、明らかな原因がなく、また基礎疾患がないにもかかわらず血小板が減少する病気である。そのために紫斑や出血症状がみられる。血小板の減少は血小板の破壊が亢進するためであり、これは抗血小板抗体が出現するためと考えられている。すなわち病因には自己免疫機序が関与していると考えられるが、病因の詳細はまだ不明である。
本邦における有病率は人口10万人あたり3〜5例、年間の新患発生数は1700〜4100人と推定される。
ITPは急性型と慢性型があるが、急性型は小児に好発し、男女ほぼ同数にみられる。慢性型は成人とくに20歳前後に多く、男女比は1:3で女性に多発する。
1. 出血症状
紫斑が主要症状である。その程度は血小板数減少の程度とほぼ比例する(表1)。
点状出血、斑状出血がよくみられる。透明なガラス板で圧迫しても消褪しないところから出血と判定できる。
その他、鼻出血、歯肉出血、血尿、性器出血(女性)などもみられるが、下血、関節出血は多くない。ときに激症例で脳出血をみることもある。2. 貧血
出血が持続すると貧血の症状をみる。
3. 脾腫
ITPでは脾臓の関与は重要であるが、臨床的に脾を触知することはあまりなく、触知しても軽度である。
1. 末梢血液検査
ITPでは血小板減少は必発である。ふつう10万以下であれば減少とみなすが、本症では初診時、90%の症例で5万以下である。さらにその半数の症例で、2万以下の高度減少を示す。
塗抹標本で血小板の形態を調べると、直径4μm以上の大型のものがみられることがある。
赤血球と白血球には原則として異常を認めない。しかし出血が長期間続いたり、大量出血が起これば、当然貧血はみられることになる。2. 骨髄像
巨核球の数は正常または増加をみる。一般に大型の巨核球が多く、また、巨核球周縁の血小板附着像に欠しいのが特徴である。
骨髄像全体として低形成を示さない。3. 出血に関する検査
血小板減少に伴い出血時間延長、毛細血管抵抗減弱、血餅退縮低下などがみられる。
しかし、全血凝固時間、プロトロンビン時間、部分トロンボプラスチン時間(PTT)など凝固系検査は正常である。4. 特殊検査
(1)血小板寿命:51Cr標識血小板を静注して寿命をみると、正常では約10日であるが、ITPでは2〜3日以下と著明に短縮する。
(2)血小板抗体:ITP患者の1/2〜1/3で血中に抗血小板抗体が認められる。最近では患者の血小板に結合した免疫グロブリン(PAIgG)を測定する方法が開発された。
紫斑を主とする出血症状があり、それが血小板減少に基づくものであり、そして他に原因疾患がみあたらない、という3点につく(表2)。骨髄所見で低形成なく、巨核球は正常か増加していることを確認すれば、診断はそう難しいものではない。
ただ注意しなければならないものにSLEがある。定型的なSLEは問題ないが、血小板減少のみではじまるSLEでしばしば最初ITPと診断することがある。これは止むを得ないことで、このような症例では経過を追うことになる。
急性型は2〜6週で約80%が軽快する。慢性型は数年ないし十数年の経過を辿り、軽快・増悪をくり返し、20〜30%は難治性となる。
死亡率は8〜10%であるが、重要臓器の出血以外、治療による合併症も含まれる。