脊髄小脳変性症


 脊髄小脳変性症spinocerebellar degeneration(SCD)とは小脳と関連諸核およびその伝導路の変性をきたす疾患の総称である。臨床的には小脳性運動失調を主徴とする。
 病理学的には小脳あるいは小脳に関連する神経路の原因不明な一次性の系統的変性を示す。したがって血管障害、アルコール中毒や癌に続発する二次性運動失調は除外される。
 脊髄小脳変性症には種々の疾患が含まれており、その分類もまだ一定していない。

頻度

 厚生省調査研究班による全国調査(昭和52年)では、総計1005例が集められた。
 有病率は人口10万人あたり2〜4人とされている。
 男女比は1.5:1で男性にやや多く、各疾患別でも男性に多いようである。
 各疾患別の相対頻度を示す。
 発病年齢はFriedreich病、遺伝性痙性対麻痺は20歳以下に多く、晩発性小脳皮質萎縮症、オリーブ橋小脳萎縮症は40歳以上の発症が多いとされている。
 わが国と欧米における頻度とにあまり差は認められていない。

病型

1. 主として脊髄病変を示すもの

@Friedreich病
A遺伝性痙性対麻痺
BRoussy-Lévy病
C遺伝性後索性運動失調症

2. 主として小脳求心系の変性を示すもの

 小脳への求心系である橋核小脳路や脊髄小脳路と、小脳皮質とに変性性病変をもつ疾患である。橋核に病変をもつということが特徴である。

@オリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)
AMenzel型遺伝失調症

3. 主として小脳皮質の変性を示すもの

 小脳皮質のプルキンエ細胞の変性を中心とするもので、同時にしばしばオリーブ核変性を伴なうが、橋核変性や歯状核、大脳基底核変性を伴わない。

@晩発性小脳皮質萎縮症(LCCA)
AHolmes型家族性失調症

4. 主として小脳遠心系の変性を示すもの

 小脳歯状核ならびにその遠心路である上小脳脚に変性性病変を有するものである。

@Ramsay-Hunt症候群
A歯状核・赤核・淡蒼球・ルイ体萎縮症(DRPLA)

臨床像

1. 小脳半球の皮質の障害

@目標に向け運動を行った際、行きすぎ(hypermetria)、足りない(hypometria)などの測定障害(dysmetria)がみられる。

A指・鼻試験、膝・踵試験陽性。

B患者の指や下肢の母趾で検者の指を正しく早く触れるようにさせると、最短距離でスムーズにいかず、途中で運動に段がついたり、ゆれたりする。

C上肢の回内、回外運動をさせると、不規則でゆっくりとする(adiadochokinesia、拮抗運動障害)。

D筋のトーヌスは低下する。

2. 小脳前葉の障害

 歩行の失調がみられ、千鳥足となる。

3. その他

@躯幹が前後左右にゆれる(truncal titubation)。言語失調として、ゆっくりとなり、一語一語の区切りが悪くなり、また爆発的になったりする。

A歯状核や結合腕が侵されると企図振戦(intention tremor)が現れる。

B脊髄後索が障害され、深部知覚や位置覚が障害されても失調が生じる。この時は視覚でかなり代償される。

代表的な脊髄小脳変性症の臨床像を以下に述べる。

●Friedreich病

@好発年齢20歳以下、常染色体性劣性。

A小脳性運動失調と深部知覚障害による運動障害が合併する。一般的に上肢より下肢に病変が強く認められる。

B腱反射消失。

C断綴性言語、眼球震盪がみられる。

D心筋症、不整脈などを伴う。

E経過は緩徐、進行性。

F錐体路徴候はほとんどみられない。

●遺伝性痙性麻痺

@発症年齢15歳以下。常染色体優性または劣性。

A下肢の痙性麻痺を主体とする錐体路症状が前面にでる。

Bふつう小脳症状、知覚障害をみない。

C経過は緩徐進行性で、20年ぐらいで車椅子生活となる。

●オリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)

@好発年齢40〜50歳、男性に多いとされている。

A小脳性運動失調で発病することが多いようだが、歩行障害で気づかれる場合もある。

B発病後しばらくして錐体外路症状(パーキンソン様症状)をみる。

C錐体路徴候、排尿障害、ときに知能低下をみることもある。

●晩発性小脳皮質萎縮症(LCCA)

@初老または老年(50〜70歳)に好発し、男性に多いとされる。

A小脳性歩行障害を主体とする症状を示す。

Bときに錐体路徴候、知能低下を伴うが、錐体外路徴候は明らかではない。

 


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