クローン病 Crohn's disease は、B.B.Crohn(1932)が、それまで腸結核として扱われていた回腸末端部を侵す亜急性または慢性の腸炎を回腸末端炎 terminal ileitisと 名付けて1つの独立疾患として報告したことにはじまる。
しかし、その後の研究により本症は回腸末端部のみならず、口腔から肛門までの消化管のあらゆる部位に起こりうることがわかった。
クローン病は内科的治療に抵抗し、手術を行っても高率に再発することが、日常臨床において1つの大きな問題となっている。
本症は欧米に多く、アジア、アフリカには少ない病気である。
1960年代まではわが国ではクローン病はきわめて稀な疾患とされていた。
しかし、今日では決して珍しい病気でなく、小腸疾患の中ではありふれた病気の1つとして考えられている。
わが国では人口10万人当たりの有病率は、0.88人とされている(1985年)。しかも年々患者数は増加の傾向にあり、ここ20年間に実に約7倍もふえた。
男女比は約2:1で男性に多いようである。
好発年齢は20歳代、10歳代で約80%を占めるほど、若年者に多い病気である。
病因については細菌・ウイルスによる感染、免疫異常、遺伝的素因、心身症的要因、食物や環境因子の関与など種々の説があるが、真の原因は不明である。
病理学的にみると、本症の約半分は小腸、大腸の両方に病変がみられる。小腸のみが約25%、大腸のみが残り25%である。
好発部位は回腸末端がもっとも多く、次いで盲腸、上行結腸、回腸中部の順となる。
病変部を肉眼的にみると、病巣は区域性で、非連続的に多発している。
狭窄や腸壁の肥厚がみられ、粘膜のcobble stone(敷石)様外観は特徴的とされている。一個または多発する縦走性潰瘍もよくみられる所見である。
この潰瘍によって形成される裂溝fissureは深部におよび、他の腸管や骨盤臓器などとの間に瘻孔fistulaや膿瘍をつくる。
組識学的所見としては非乾酪性の肉芽腫が特徴とされている。
また、リンパ球浸潤、リンパ管拡張を主体とした腸壁全層にわたる貫壁性transmuralの炎症がみられる。
腹痛、下痢、栄養不良(るい痩)が本症の三主徴である。その他、発熱、貧血、腸狭窄などもみられる(表1)。
身体的所見として、腹部圧痛、腹部腫瘤、難治性の痔瘻などがみられる。
合併症として関節炎、結節性紅斑、虹彩炎、アフタ性口内炎、壊疽性膿皮症などに注意する。
検査所見としては、貧血、白血球増加、血小板増加、赤沈中等度亢進、CRP陽性がみられる。
便潜血反応はほとんどの例で陽性となる。
下痢や栄養障害による低蛋白血症(とくに低アルブミン血症)、低ナトリウム血症、低カリウム血症もしばしば認められる。
X線検査は重要である。その特徴として、病変が区域性で非連続性であること(skip lesion)、腸管の狭窄や腸壁の肥厚がみられること、粘膜面に縦走潰瘍や敷石像(cobble stone appearance)がみられること、裂溝や瘻孔がみられることなどが挙げられる。
内視鏡検査は主として大腸クローン病に用いられる。X線所見でみられる所見がそのまま内視鏡検査の所見でもある。
すなわち病変は区域性で、正常粘膜を挾んで、狭窄や縦走潰瘍、cobble stone appearanceがみられる。
内視鏡のときに必ず生検を行い、乾酪壊死を伴わない肉芽腫を証明することが大切である。
再発と緩解をくり返しながら、しだいに増悪する傾向にある。ときに急激に進行し合併症を併発する。病変部を切除しても50〜60%再発する。