後縦靭帯骨化症


 後縦靭帯は脊椎の椎体後縁に沿って縦走する靭帯である。これが肥厚し骨化する病気が後縦靭帯骨化症ossification of posterior longitudinal ligament(OPLL)である。骨化は頸椎に多くみられるが、まれに胸椎にもみられる。
 一方、脊柱管の後壁にあって、椎弓間を連結している靭帯は、黄色を呈しているので黄色靭帯といい、これが骨化したときを黄色靭帯骨化症ossification of yellow ligament(OYL)という。OYLは胸腰椎移行部に好発する。
 頸椎後縦靭帯骨化症に黄色靭帯骨化症を合併する頻度は約55%といわれ、脊柱管は後縦靭帯骨化症によって前方から、黄色靭帯骨化症によって後方から狭窄を生じ、脊髄や神経根が圧迫され麻痺などの症状を呈することになる。

頻度

 後縦靭帯骨化症の全国受診患者数は年間4200名と推定される(厚生省調査、1975年)。集団検診による頸椎X線検査による後縦靭帯骨化症の発見頻度は2%といわれるが、その割に受診患者数が少ないのは無症状の者が多いためと考えられている。
 好発年齢は50歳代がもっとも多く、次いで60歳代、40歳代となり、30歳代未満の発症はきわめて稀とされている。
 性別では頸椎後縦靭帯骨化症は男性が女性の約2倍と多く、胸・腰椎後縦靭帯骨化症は逆に女性に多いといわれる。

臨床像

 後縦靭帯骨化症が存在しても脊柱管にゆとりがあるうちは無症状に経過する。後縦靭帯骨化症の骨化が進んで脊髄を圧迫するようになると症状がみられるようになる。

1. 初発症状

 上肢のしびれや痛みを初発症状とするもの約40%、項頸部のこりや痛みを訴えるもの約34%といわれる。
 下肢のしびれや痛みを初発症状とするもの約16%、下肢の運動障害約13%である。
 したがって、日ごろこうした症状を訴える患者を診たときは後縦靭帯骨化症の可能性を頭に入れておくことが大切である。

2. 主症状

(1)項頸部、体幹の症状

 項頸部のこわばりや傷みのほか、背部の圧迫感を訴える。頸椎の運動制限、頸部屈伸時に背部に走る電撃様疼痛、胸郭運動制限などもみられる。

(2)上下肢の症状

 手指の運動が制限され、身の回りの動作が困難となる。下肢でも運動障害がみられ、進行して最終的には歩行不能となる。
 重症例では振動覚や位置覚も障害される。
 腱反射は上下肢ともに亢進することが多く、Hoffmann反射、Wartenberg反射、膝クローヌス、足クローヌスなどもみられる。

(3)膀胱直腸障害

 頻尿、開始遅延、残尿感などを訴える。便秘がしばしばみられる。

(4)その他

 本症は肥満の人に多くみられ、耐糖能異常を示すことが知られている。

 後縦靭帯骨化症の症候の発現頻度を表1に示す。

 本症患者の約20%は日常生活に介助を必要とし、約40%は介助不要でも日常生活が不自由であるといわれている。

X線像

 頸椎単純撮影画像で、椎体後面に縦走りする骨化像をみることができる。
 しかし、本症は肥満男性に多いため、下位頸椎に骨化病変のある場合は、肩の陰影と重なるため、単純写真だけでは判断できないことがある。このときは矢状面の断層写真かCTスキャンが有効である。
 頸椎の骨化はC2〜C7が多く、C1とTh1は比較的少ないとされている。骨化の広がりは、2〜4椎体に及ぶことが多いようである。
 胸椎、腰椎のX線撮影も行い、胸・腰椎の後縦靭帯骨化症と黄色靭帯骨化症の存在の有無を調べておく必要がある。

予後

 5年以上の経過をみると、後縦靭帯の骨化は徐々に増大し、約70%の症例では骨化病変の長さも厚さも増大するため脊椎管は狭窄し、脊髄は障害を受けるに至る。
 長期的にみると脊髄麻痺の予後は不良である。


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