特発性拡張型心筋症


 特発性心筋症idiopathic cardiomyopathyは原因不明の心筋疾患で、拡張型dilated type(うっ血型)、肥大型hypertrophic type、拘束型restrictive typeなどに分けられる。このうち特発性拡張型心筋症(DCM)は、心臓の内腔が著しく拡張し、心筋の収縮不全を起こし、うっ血性心不全の臨床像を呈することが特徴である。
 心臓病は一般にその末期では、心拡大と心不全をきたすようになるものであるが、本症では弁膜症や冠動脈硬化などの基礎疾患がなく、心筋の変性や線維化が広範にみられる予後不良の疾患である。

頻度

 性差は2:1で男性に多く、発病年齢は全年齢層にみられるが、25〜60歳代にもっとも多いとされている。我が国における地域差はない。

病因

 特発性拡張型心筋症は特発性という名の通り病因は不明である。発症にはアルコール、ウイルス性心筋炎に伴う免疫異常、遺伝因子、高血圧、栄養障害などが関与するといわれている。

臨床像

1. 症状

 初発症状としては易疲労感、労作時の動悸、呼吸困難、胸部圧迫感などがみられる。不整脈で発見されることもある。
 はじめは労作時の症状が強くみられるが、次第に浮腫がみられるようになり、うっ血性心不全の症状を呈するようになる。

2. 身体的所見

 皮膚の蒼白、チアノーゼ、頸静脈の怒張、肝腫大、下肢の浮腫、腹水などを認める。
 心音ではT音の減弱、V音の亢進、収縮期雑音を認めることが多いようである。心拍数が毎分100〜110をこえると、V音とW音が重なって重合奔馬調summation gallopとなる。
 肺の聴診では肺うっ血による湿性ラ音が聴かれる。背下部でもっともよく聴診できる。

検査所見

 胸部X線写真では、心陰影の拡大がみられる。左室の拡大が主だが、右室、右房、左房も拡大を示す。半分以上の症例でCTRが60%以上になる。
 肺紋理の増強、胸水貯留をみることもある。
 心電図では、ほとんどの症例で異常がみられるが、本症に特異的所見はない。80%以上の症例でST・T変化がみられ、約半数の症例で心室性期外収縮、QRSの延長(0.08秒以上)がみられる。
 心エコー図は本症の診断に有用である。心室内腔の著しい拡大、心室壁運動の低下、駆出分画の低下が主な特徴である。憎帽弁の振幅の減少ならびにB−B'step formationも比較的特徴ある所見とされている。
 心臓カテーテル検査および心血管造影検査では、心拍出量の低下、左室拡張末期圧の上昇、肺高血圧、駆出率の低下、左室容量の増加、憎帽弁逆流などが認められる。

診断

 特発性拡張型心筋症の診断基準を表1に掲げる。

 原因不明の心拡大、うっ血性心不全の患者を診たときには一応本症を考えてよいのだが、その前に基礎疾患ないし全身性の異常に続発する特定心筋疾患を除外しなければならない。
 除外すべき基礎疾患としては、リウマチ性心疾患、心奇形、高血圧性心疾患、虚血性心疾患、内分泌性心疾患、貧血、肺性心などがある。
 また、特定心筋疾患(二次性心筋疾患)には産褥心、アルコール性心疾患、原発性心内膜線維弾性症、心筋炎、神経・筋疾患に伴う心筋疾患、栄養性心筋疾患(脚気心)、代謝性疾患に伴う心筋疾患(ヘモクロマトーシス)、アミロイドーシスやサルコイドーシスに伴う心筋疾患などがある。
 したがって、拡張型心筋症はこれらの疾患がすべて否定された上で診断されるものであって、安易に診断することはできない。


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