表皮水疱症とは日常生活で何らかの機械的刺激が加えられた皮膚に水疱が生じる疾患をいう。これには先天的素因に基づく先天性表皮水疱症と非家族性後天性慢性の後天性表皮水疱症とがある。ここでは先天性表皮水疱症についてのべることにする。
我が国における表皮水疱症は厚生省調査研究班(昭和58年)の報告によると、推定有病数は約620といわれ、東北地方、近畿地方に多いといわれている。
性差では男性にやや多いようであるが、それほどの差ではない。人種別ではとくに有意の差はみられていない。
遺伝形式と病理組識学にみた水疱形成部位の差により次の4型に大別される。
(1)単純型
遺伝形式は常染色体優性で、表皮内に水疱ができる。推定有病数は280〜330、人口100万人に対し2.4〜2.8といわれている。
(2)接合部型
遺伝形式は常染色体性劣性で、水疱は表皮と真皮の接合部にできる。推定有病数は15〜17、人口100万人に対し0.12〜0.14といわれている。
(3)優性栄養障害型
遺伝形式は常染色体性優性で、水疱は真皮内にできる。推定有病数は100〜120、人口100万人に対し0.90〜1.1である。
(4)劣性栄養障害型
遺伝形式は常染色体性劣性で、真皮内に水疱ができる。推定有病数は140〜160、人口100万人に対し1.2〜1.4である。
日常生活で外力の刺激により反復して生じる水疱が主要な臨床症状である。
1. 単純型
単純型は生後間もなくより発症し、主要な病型はK bner型といわれるものである。水疱の内容は黄色透明である。水疱は温暖の季節に好発する傾向にあり、毛髪、歯牙、爪は正常で、全身的にも異常を認めない。軽微な機械的刺激で水疱を作るが、瘢痕を残さずに治癒する。
2. 接合部型
接合部型の主要な病型は致死型(Herlitz型)といわれるものである。出生時すでに広範なびらんのみられることが特徴である。水疱は皮膚および近接粘膜にみられ、きわめて難治性である。しかし、瘢痕は残さないことが多いようであるが、症例の多くはその名のごとく3が月から1年で死亡する。しかし、死亡せず成人期に達することもあり、このときDisentis型という。歯牙病変はみられるが、食道粘膜までは侵されない。
3. 優性栄養障害型
優性栄養障害型は、生後間もなく発症し主要な病型をCockayne-Touraine型という。軽度の外傷により漿液性あるいは血性の水疱を生じる。水疱治癒後に瘢痕を残す。爪は変形あるいは喪失する。毛髪、歯牙および粘膜は一般に侵されない。全身的にもとくに異常を認めない。
4. 劣性栄養障害型
劣性栄養障害型の主要病型は、Hallopeau-Siemens型である。生後数時間以内に外傷性あるいは外傷と関係なく水疱を生じ、その内容はしばしば血性である。瘢痕を残す。手足が侵されると、指趾が癒着して合指(趾)症あるいは棍棒状となる。肘や膝では関節の拘縮を起こす。爪は萎縮、喪失し、頭部は脱毛、歯牙の欠損となる。口腔・咽頭・食道・肛門などの粘膜病変をみる。消化管病変のため栄養状態不良となる。
先天性表皮水疱症の各病型の主な鑑別点を表1に示す。
また本症では上にのべた4型の中に、さらに細かい亜型の存在することも知られており、その主な臨床的特徴を表2に掲げる。
先天性表皮水疱症を診断するときには、次に挙げる事項を除外することが必要である。
すなわち、@薬剤および感染に起因するもの
A日光過敏に伴うもの
B自己免疫性水疱症
Cその他の水疱性疾患
単純型、優性栄養障害型では一般に生命に対する予後は良好である。
接合部型および劣性栄養障害型の重症例では、水疱部からの蛋白漏出、出血およびびらん面における2次感染などが予後に影響を及ぼす。とくに接合部型は多くの例で予後不良である。
劣性栄養障害型の難治性皮疹部には悪性腫瘍の合併がみられることが多いといわれている。