広範脊柱管狭窄症とは頸椎、胸椎および腰椎のうち、少なくとも2か所以上の部位で脊柱管が狭窄して神経障害を呈するものをいう。
先天性の場合は軟骨無形成症でみられるが、後天的には加齢に基づく変性のほか、脊柱の変形または不安定性、脊柱彎曲異常、後縦靭帯骨化症(OPLL)以外の靭帯骨化、その他原因不明などが挙げられる。しかし一般に、本症では基盤に脊柱管腔の全長にわたる発育性脊柱管狭小develop-mental stenosisを有することが多く、これに加齢による変性や不安定性の付加という要素が加わるといわれている。
主に中年以降に発症し、四肢・躯幹の痛み、しびれ、筋力低下、運動障害が主症状となる。脊髄麻痺のため高度の歩行障害をきたすほか、いわゆる間欠跛行のために歩行困難となることもある。
病変が1か所である単発性の脊柱管狭窄症は定型的な症状を呈するので、診断も比較的容易だが、脊柱管腔の狭小が多発する場合は症状が複雑なため診断がしばしば困難となる。
一般に頸部脊柱管狭窄症は痙性四肢麻痺、胸部脊柱管狭窄症では痙性対麻痺、そして腰部脊柱管狭窄症では馬尾または神経根障害(弛緩性麻痺)を呈する。
広範脊柱管狭窄症では複数の部位における神経障害が発現するため、その症状は複雑となる。主要症状は以下の通りである。
(1)四肢・躯幹の疼痛、しびれ、知覚鈍麻
(2)四肢・躯幹の筋力低下、運動障害。
(3)間欠跛行。
(4)膀胱・直腸障害。
(5)症状は増悪、緩解をくり返し、徐々に進行して歩行困難に陥る。
(6)転倒などの外傷により症状は悪化し、重篤な脊髄麻痺をきたすことがある。
広範脊柱狭窄症を診断する際に注意することは、神経学的所見の複雑さを見きわめることである。たとえば頸部脊柱管狭窄症と腰部脊柱管狭窄症が合併すると、四肢深部腱反射が亢進しているにもかかわらず、アキレス腱反射が減弱する。
また発症からの経過にも注意する。複数の高位の障害が同時に発現することはなく、一般に時間的にずれがある。たとえば上肢と下肢の障害の発症時期が異なったり、増悪の時期も異なる。左右の重症度も上肢と下肢で異なることがある。
広範脊柱管狭窄症では全脊柱のX線検査が大切である。
単純側面X線写真により脊柱管の前後径を測定する。
単純CTは脊柱管の横断面を把握するのに必要な検査である。これによって骨棘や靭帯骨化の脊柱管内への突出の状態を知ることができる。とくに腰椎では脊柱管腔の形がみられるが、本症ではクローバー状になったりする。
脊髄の状態をみるためには、脊髄造影法myelographyが行われる。圧迫因子と脊髄との関係を観察するためにはCT-myelo(脊髄造影後のCT)が有用である。脊髄造影で異常のある部位をCT-myeloでさらに精細に調べることになる。
MRIは本症にとってきわめて重要な画像検査法である。無侵襲で脊髄や軟部組識を描出できる点では脊髄造影方よりすぐれ、また脊髄造影方で観察しにくい頸胸移行部も、よくみることができる。
広範脊柱管狭窄症では他に合併症のない限り、血液、尿検査などに異常をみることはない。
前に掲げた6つの主要症状のうち、少なくとも(1)と(2)があり、画像検査上、次の3つをすべて満足する場合に、広範脊柱管狭窄症と診断する。
(1)椎
(2)狭小化の程度として脊髄、馬尾神経、神経根を明らかに圧迫しているもの。
(3)画像上の脊柱管狭小化と臨床症状との間に関連性が疑われるもの。