原発性胆汁性肝硬変primary biliary cirrhosis、PBCとは、肝外胆管系の閉塞を伴わず、長期にわたり黄疸が持続し、数年の経過で門脈圧亢進症状をきたす疾患である。
本症の中には皮膚掻痒感や黄疸などの臨床症状を欠く例があり、これらを無症候性PBCと呼び、無症候性のまま数年以上を経過することもある。
原因は不明であるが、血中に抗ミトコンドリア抗体anti mitochondrial antibody、AMAが高値陽性であること、自己免疫疾患の合併が多いことなどから、自己免疫現象の関与が考えられる。
病理組識学的所見の特徴は、中等大の小葉間胆管、隔壁胆管にみられる炎症性の破壊像である。その周囲には小円形細胞、形質細胞の集族性浸潤がみられ、いわゆる慢性非化膿性破壊性胆管炎 chronic nonsuppurative destructive cholangitis、CNSDCの像を呈する。
病変の進行とともに線維増殖を伴い、次第に小葉間胆管は消失し、肝硬変へと移行する。
この特異的な胆管炎に始まり肝硬変に至るまでの経過を、4つの病期に分けることができる(表1)。
CNSDCは診断的価値の高い病変であるが、本症の全例にみられるものではないので、注意が必要である。
かつては、比較的まれな疾患と考えられていたが、本症に関する知識の普及とともに症例数も増えてきた。
同研究班の昭和60年度報告では、過去18年間に453例が報告されているが、このうち無症候は230例でほぼ同数であるが、最近の5年間について検討すると、無症候性PBCと診断される例が多くなり、その比は約2:1となっている。
男女比は圧倒的に女性に多く、453例中401例(88.5%)が女性である。
発症時の年齢は無症候PBCでは50歳代にピークがあり、症候性では40歳代に発症する例が多いとされている。
初発症状としては、約50%の症例で黄疸に先行する皮膚掻痒感がみられる(表2)。
黄疸は出現すると、消褪することなく漸増していく。肝は中等度に腫大し、しばしば脾腫も認める。
皮膚には黄色腫xanthomaを伴うことが多く、これは血清総コレステロール値450mg/dl以上が3か月以上続いた場合にみられるといわれている。
病状が進行すると、腹水、浮腫、食道静脈瘤など、門脈圧亢進の症状をみるようになる。
検査所見としては、初期に血清ビリルビン値が上昇していなくても、血清アルカリホスファターゼ、γ−GTPなどの胆道系酵素や血清総コレステロール値の上昇がみられる。
血清ビリルビンは発症時には平均約4mg/dl程度であるが、経過とともに増加していく。GOT、GPTも高値となるが、たかだか150〜100単位以下のことが多いようである。
赤沈亢進、血清IgM高値もみられる。特異的な所見として、血中抗ミトコンドリア抗体が陽性となることで、陽性頻度は90〜95%でその力価も高いことが多いとされている。
その他、血中免疫複合体増加、抗核抗体陽性や他の自己抗体が出現することもある。
本症の診断基準を表3に掲げる。
なお本症と鑑別すべき疾患としては、慢性薬剤性肝内胆汁うっ帯があげられる。たとえば、メチルテストステロン、クロルプロマジン、サルファ剤などによって長期間遷延する黄疸がみられるが、PBCと異なりAMAは陰性である。
本症の予後はこれまでは診断確定後、約5年で死亡の転帰をとるといわれていたが、最近では比較的早期に診断される例がふえてきた。
とくに無症候性PBCでは、健康人と変わりない生存期間が期待できるといわれている。
黄疸を有する例は、皮膚掻痒感のみの例より予後不良であるので、本症の予後を推定する上で、黄疸の有無は重要といえる。
経過中の合併症としては、黄色腫のほかに脂肪便、骨病変がある。骨病変は胆汁酸の分泌障害に伴うビタミンD、Caの吸収障害によると考えられ、骨粗鬆症をきたす。
PBCの死因の大部分は肝不全、あるいは消化管出血である。