2 バッド・キアリ(Budd-Chiari)症候群


 肝臓から流れ出る血液を運ぶ肝静脈か、あるいはその先の心臓へと連なっている肝部下大静脈の閉塞によって、肝臓からでる血液の流れが悪くなり門脈圧が上昇し、門脈圧亢進等の症状を示す疾患をいう。腫瘍による肝静脈や下大静脈の閉塞例は、通常本症には含めない。

頻度

 有病率は人口100万あたり2.4人、年間発病率は人口100万人あたり0.34人と推定されている。男女比は1.6:1と男性にやや多い。平均発症年齢は、男性36歳、女性47歳。

病因

 肝静脈あるいは肝部下大静脈の先天的な血管形成異常、後天的な血栓等が原因として考えられているが、原因不明のものが約70%を占めており、はっきりとしたことはよくわかっていない。

臨床像

門脈圧亢進により脾腫、食道・胃静脈瘤、腹水などの症状がでる。脾機能亢進による貧血、静脈瘤破裂による吐血、下血等の症状が見られることもある。その他の症状としては腹壁の静脈の怒張、下腿浮腫などがある。

治療

 肝静脈、肝部下大静脈による症状および門脈圧亢進による症状の改善が治療目標となる。具体的には、前者に対しては、諸検査で血栓が確認されれば、血栓を予防したり、溶解させるために抗凝固療法を行う。また病態に応じては、狭窄部のバルーンカテーテルによる狭窄部拡張術や、閉塞・狭窄を直接解除するような手術を行う。
 後者に関しては、食道・胃静脈瘤に対する専門的処置を行う。

予後

 バッド・キアリ(Budd-Chiari)症候群は発症形式により急性型と慢性型に分けられる。急性型は一般に予後不良であり、腹痛、嘔吐、急速な肝腫大及び腹水にて発症し、1―4週間で肝不全により死の転帰をたどる重篤な疾患であるが、本邦では極めて稀である。一方、慢性型は80%を占め、多くの場合は無症状に発症し、次第に下腿浮腫、腹水、腹壁皮下静脈怒張を認める。このような場合、食道・胃静脈瘤からの出血のコントロールが重要である。


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