ファブリー(Fabry)病


 リソソームの水解酵素の一つである α-galactosidasの活性欠損・低下によりceramide trihexoside(CTH)が全身の臓器、特に皮膚、腎、神経、眼、心臓に進行性に蓄積する先天性代謝異常症である。全身症状を認める古典的Fabry病と心臓障害を主症状とする心Fabry病があり、臨床像ならびに予後が異なる。病因はα-galactosidase遺伝子の異常であり、X染色体劣性遺伝形式をとるため、男性は発病するが、女性は発病しても軽症であることが多い。

経過

 臨床経過は、臨床病型と性により異なる。古典的Fabry病の男性患者では、幼少児より被角血管腫、四肢末端痛、低汗症、角膜混濁を認め、徐々に進行して、脳・腎・心の障害を生じ、30〜40歳代で主に腎不全で死亡する。心Fabry病の男性患者では通常40歳以降の中高年で発症、心肥大を主症状とし、進行性に悪化して心不全や不整脈で死亡する。女性のFabry病患者では病状は通常、男性より軽く、進行も比較的ゆっくりである。

主要症状及び臨床所見

古典的Fabry病では通常、1)〜7)を認めるが、一部症状を欠く症例がある。心Fabry病では7)のみ認める。

1)被角血管腫 臀部・外陰部に好発し、自覚症状を伴わない暗赤紫の小丘疹。

2)四肢末端痛 発熱などの体温上昇時に四肢の激痛を生じやすく、carbamazepineが著効する。20歳以降になると軽快することが多い。

3)低汗症 発汗試験で明らかになる。体温上昇を来たしやすい。

4)角膜混濁 細隙灯(slit-lamp)検査により確認できる渦巻き状・放射状の特徴的角膜混濁で、視力障害などの自覚症状はない。

5)脳血管障害 多発性小梗塞(ラクナ)が特徴的。

6)腎障害 尿蛋白・血尿を認め、進行して腎不全になる。

7)心障害 右室肥大を伴いやすく、左室肥大様式も全周性、非対象性など多様である。進行性に肥大するが、さらに進行すると収縮力低下、特に、左室後壁基部の菲薄化を伴う運動低下を生じやすい。洞不全や房室ブロックなどの刺激伝導障害などの不整脈を合併しやすい。

参考となる検査所見

1:酵素活性: 血漿もしくは白血球等のα-galactosidase活性の欠損もしくは低下(正常平均値の20% 未満)。ただし、稀に20%以上の症例もある。

2:病理所見: 皮膚小血管、汗腺、腎臓、神経、心筋のいづれかの病理検査により、ヘマトキシリン・エオジン染色による細胞内の空胞化やトルイジン・ブルー染色による青色に染まる蓄積物は、Fabry病を疑う所見である。ceramide trihexoside(CTH)の蓄積を示す電顕写真による評価は必須であり、リソソーム内にFabry病に特徴的な形態を呈する蓄積物を認める。また、心Fabry病では、心筋の病理検査が必須である。

3:遺伝子解析: α-galactosidase遺伝子の異常。エクソン内に異常を認めず、メッセージが低下している症例もある。

4:細隙灯検査: 渦巻き状・放射線状の特徴的角膜混濁。

5:頭部CT,MRI: 大脳、小脳、脳幹部の多発性脳梗塞。

6:腎機能: 尿蛋白や血尿。クレアチニン・クリアランスの低下。

7:心臓超音波検査: 左室肥大(壁厚13o以上の肥大)、右室肥大(壁厚4o以上)を伴い、左室壁運動低下を認める場合がある。

8:心電図: 心室性、上室性不整脈や洞不全や房室ブロックなどの刺激伝導異常。

鑑別診断

頴朮爪絢APompe病、心肥大や被角血管腫を生じる代謝病など

診断基準

@Vの「主要症状及び臨床所見」の1)〜7)の症状が少なくとも一つ以上ある。

A血漿もしくは白血球等のα-galactosidase活性の欠損(活性0もしくは測定感度以下)または低下(正常平均値の20%未満)。

B皮膚小血管、汗腺、腎臓、神経、もしくは心筋の電顕病理検査により、細胞のリソソーム内にFabry病に特徴的形態を呈する蓄積物の所見。

Cα-galactosidase遺伝子異常の同定。即ち、α-galactosidase遺伝子の点変異、欠失、重複、スプライシング変異もしくはメッセンジャーRNAの低下等を認める

確診例とは、下記の1〜3のいずれかに該当する症例とする。

1上記、診断基準の@〜Bの項目すべてをみたすもの。

2Vの「主要症状及び臨床所見」の7)のみ認め、診断基準AおよびBにおいて心筋の病理所見を認め る場合は、心Fabry病と診断する。

3女性患者で

A)診断基準@とBを満たすが、Aの活性が正常を示す場合は、Cを満たす必要がある。

B)父親が、Fabry病と確定している場合は診断基準@とBを満たせばよい。

特定疾患治療研究事業の対象範囲

診断基準における確診例とする。


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